【2023/11/25(土)~12/1(金)】『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』『マリア・ブラウンの結婚』

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー プロフィール

1945年5月31日、連合国軍占領下のドイツ南部バート・ヴェーリスホーフェンで、医学博士の父と翻訳家の母のもとに生まれる。

1967年に劇団「アクション・テアーター」に参加。同劇団解散後の1968年、仲間たちとともに劇団「アンチテアーター」を設立。劇団での活動の傍ら、放送劇の執筆、演出、映画出演など幅広い分野で活躍する。同時に劇団メンバーとの挑発的かつ実験的な長編映画制作を始め、1971年に映画製作会社「タンゴ・フィルム」を設立。第一作となった『四季を売る男』はドイツ映画大賞を受賞した。

1978年に発表した『マリア・ブラウンの結婚』が商業的に成功を収め、ニュー・ジャーマン・シネマを代表する監督として世界的に認められる。1982年の『ヴェロニカ・フォスのあこがれ』はベルリン映画祭金熊賞を獲得。ドイツ映画の未来を託される存在となった矢先の1982年6月10日に、コカインの過剰摂取により37歳で急死する。

彼の映画は、女性の抑圧、同性愛、ユダヤ人差別、テロリズムなどスキャンダラスなテーマが多く、常に激しい議論を巻き起こした。遺された42本の監督作品は、今日にも多くの問題を提起し続けている。

❖主なフィルモグラフィ❖

・愛は死より冷酷(1969)
・出稼ぎ野郎(1969)
・悪の神々(1970)
・何故R氏は発作的に人を殺したのか?(1970)
・リオ・ダス・モルテス(1971・TV)
・ホワイティ(1971)
・聖なるパン助に注意(1971)
・四季を売る男(1971)
・ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972)
・獣道(1972)
あやつり糸の世界(1973・TV)
マルタ(1973/74・TV)
・不安は魂を食いつくす(1974)
・エフィ・ブリースト(1974)
・自由の代償(1974)
・キュスタース小母さんの昇天(1975)
・不安が不安(1975・TV)
・少しの愛だけでも(1976・TV)
・悪魔のやから(1976)
・シナのルーレット(1976)
・哀れなボルヴィーザー(1977)
・秋のドイツ (1978)
・デスペア 光明への旅(1978)
13回の新月のある年に(1978)
・マリア・ブラウンの結婚(1979)
第三世代(1979)
・ベルリン・アレクサンダー広場(1980・TV)
・リリー・マルレーン(1981)
・シスター・イン・トランス(1981)
ローラ(1981)
・ベロニカ・フォスのあこがれ(1982)
・ケレル(1982)


マリア・ブラウンの結婚
The Marriage of Maria Braun

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督作品/1978年/西ドイツ/120分/DCP/ヨーロピアンビスタ

■監督・原案 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
■脚本 ペーター・メアテスハイマー/ペーア・フレーリヒ
■撮影 ミヒャエル・バウハウス
■音楽 ペール・ラーベン

■出演 ハンナ・シグラ/クラウス・レーヴィッチュ/ギゼラ・ウーレン/クラウス・ホルム

■1979年ベルリン国際映画祭国際銀熊賞・女優賞受賞

© RAINER WERNER FASSBINDER FOUNDATION

【11/25(土)~12/1(金)上映】

戦争末期の混乱の中で、永遠の愛を誓ったマリアの数奇な人生。

第二次世界大戦の真っ只中、マリアは恋人のヘルマンと結婚式を挙げるが、ヘルマンはすぐに戦線に戻り行方不明になってしまう。新たなパートナーとともに戦後の混乱を乗り越えていこうとするマリアだったが……。

運命に翻弄されながらも逞しく生き抜く女性の姿を、戦後ドイツ復興とともに描いたファスビンダーの代表作。

ファスビンダーの名を世界に轟かせた大ブレイク作にして究極の<女性映画>。鳴り響く銃声や爆撃音とウエディング・ドレスのコントラストが衝撃的なオープニングに始まり、鮮烈なイメージが怒涛のごとく押し寄せる究極のメロドラマ。戦争末期からドイツがめざましい復興を遂げる1950年代半ばまでの約10年間にわたるヒロインの生き様が活き活きと描かれる。本作はファスビンダーが国際的な成功を収めた最初の作品。本国ドイツで大ヒットを記録し、日本でもニュー・ジャーマン・シネマの代表的作品として話題を集めた。波乱万丈な運命を辿るマリアを艶やかに演じたのはファスビンダー映画常連のハンナ・シグラ。本作で第29回ベルリン映画祭銀熊賞を受賞した。

ペトラ・フォン・カントの苦い涙
The Bitter Tears of Petra von Kant

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督作品/1972年/西ドイツ/124分/DCP/スタンダード

■監督・脚本・原作 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
■撮影 ヒャエル・バルハウス
■編集 テア・アイメス
■音楽 ザ・ブラターズ/ウォーカー・ブラザーズ/ジュゼッペ・ヴェルディ

■出演 マーギット・カーステンゼン/ハンナ・シグラ/カトリン・シャーケ/エファ・マッテス/ギーゼラ・ファッケルディ/イルム・ヘルマン

■1972年ドイツ映画賞主演女優賞/助演女優賞/撮影賞受賞

©Rainer Werner Fassbinder Foundation

【11/25(土)~12/1(金)上映】

ファスビンダーが、愛の孤独と絶望の中で葛藤する女性たちを描いた闘争劇。

ファッションデザイナーのペトラは、二度目の結婚に失敗して落ち込んでいた。助手のマレーネをしもべのように扱いながら、アトリエ兼アパルトマンの部屋で暮らしている。そこに、友人が若く美しい女性カーリンを連れてやってくる。彼女に惹かれて同棲をはじめるが…。

まるでベルイマン作品を思わせるような、巧緻な作劇と計算されたキャメラワーク。 愛の不可能を重厚なドラマとして結晶させた傑作中の傑作!

ニュー・ジャーマン・シネマの鬼才ライナー・ベルナー・ファスビンダーが1972年に手がけた、女性同士の愛を描いたメロドラマ。これまでの素人俳優による集団創作から離れ、メロドラマへの新境地を開き、自身で書き上げた戯曲を映画化、濃密なる愛のドラマを生み出した。映画は終始、主人公ペトラのアパルトマンの一室で展開される。その演劇的空間と映画的構図、衣装や絵画による色彩効果、印象的な音楽の挿入など、実験的な演出が取り入れられ、多作なファスビンダー監督の中でも最も完成度の高い作品となった。

1972年のドイツ映画賞で主演女優賞、助演女優賞、撮影賞を受賞。ペトラ役はマルギット・カルステン、カーリン役は後に『マリア・ブラウンの結婚』でベルリン国際映画祭の女優賞、『ピエラ 愛の遍歴』でカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞するハンナ・シグラ。支配するものと支配されるものとの愛の残酷が、レンズを通して、見るものに突き刺さる。異能の人ファスビンダーの傑作中の傑作! 2022年には、ファスビンダーを敬愛するフランスのフランソワ・オゾン監督が、本作を翻案して描いた『苦い涙』を発表している。