もっさ
今週お届けする作品はインド映画の二本立て『パッドマン 5億人の女性を救った男』と『バジュランギおじさんと、小さな迷子』です。派手な演出が目立つインド映画ですが、この二本はストーリー重視で歌や踊りが控えめ。ちょっと踏み込みにくい社会問題をコメディタッチで描きエンターテインメント性を持たせながら、観客の心を鷲掴みにします。
『パッドマン~』は、インドで生理用ナプキンを広めた男の実話を元にしたサクセスストーリーです。これが2001年の話だということに衝撃を受ける方も多いのではないでしょうか。当時のインドでは生理用ナプキンが原材料の40倍もの値段で売られており使用率はたったの12%。ほとんどの女性がボロ布や新聞紙、おがくずなどを使用していたそうです。日本で暮らす私たちからしたら、信じがたい事実…同じ時代を生きているとは思えませんよね。結婚して妻の生理時にその現状を知ったアルナーチャラム・ムルガナンダムさんは、ナプキンの手作りに乗り出します。驚きなのは、なんの知識も学力もないのに、ただ愛する妻のために動き出したこと。映画では多少脚色されてはおりますが、完成するまでのパッドマンの奮闘っぷりに笑いながらも、「よくぞここまでやってくれました!」と、毎月の生理に悩む女性として、感謝の気持ちでいっぱいになります。
いっぽう『バジュランギおじさんと、小さな迷子』は、底抜けにお人好しの青年が、パキスタンから来た迷子の少女を家まで送り届ける旅路を描いたロードムービーです。本作は全くのフィクションではありますが、とあるニュースからインスピレーションを受けているといいます。パキスタン人夫婦がまだ幼い子どもの心臓手術のためインドのチェンナイまで行ったときのこと。パキスタンだと150万ルピー(約240万円)ほどの費用が、チェンナイではたった30万ルピー(約48万円)。なんと、チェンナイの病院がその費用をも免除してくれたというのです。インドとパキスタンの歴史や、宗教間の対立、テロ問題などを考えると、憎しみを抱いてしまうのも無理ありません。だけど、両国の人々は実は平和と調和を求めているのだと、この映画は伝えようとしているのです。
映画を観れば、「目の前の困っている人を助けたい」という愛情深い主人公たちのまっすぐすぎる姿に、きっと胸が熱くなるはず。インドから届いた感動作、ハンカチ必須でご覧ください。
パッドマン 5億人の女性を救った男
Padman
■監督・脚本 R.バールキ
■撮影 P・C・スリーラム
■音楽 アミット・トリベディ
■出演 アクシャイ・クマール/ソーナム・カプール/ラーディカー・アープテー/アミターブ・バッチャン
©2018 Cape of Good Films and Hope Productions Pvt. Ltd. All Rights Reserved.
【2019年6月22日から2019年6月28日まで上映】
「愛する妻を救いたい――。」その想いはやがて、全女性たちの救済に繋がっていく。
インドの小さな村で新婚生活を送るラクシュミは、貧しくて生理用ナプキンが買えない妻のために、清潔で安価なナプキンを手作りすることを思いつく。研究とリサーチに日々明け暮れるラクシュミの行動は、村の人々から奇異な目で見られ、数々の誤解や困難に直面し、ついには村を離れるまでの事態に…。
それでも諦めることのなかったラクシュミは、彼の熱意に賛同した女性パリーと出会い、ついに運命を大きく変える出来事が――!
現代のインドで“生理用品”の普及に人生を捧げた男の感動の実話
本作の物語のモデルとなったのはアルナーチャラム・ムルガナンダム氏。彼は商用パッド(ナプキン)の3分の1もの低コストで衛生的な製品を製造できるパッド製作機の発明者だ。かつ、女性たち自らがその機械を使い、作ったナプキンを女性たちに届けるシステムを開発し、2014年には米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたほか、2016年にはインド政府から褒章パドマシュリも授与された。
主人公ラクシュミに扮するのは、素朴で誠実な男性を演じさせたら右に出る者がいない人気男優アクシャイ・クマール。監督はユニークなテーマの作品を作り続けているR.バールキ。彼の妻は『マダム・イン・ニューヨーク』の監督ガウリ・シンデーで、バールキ監督はプロデューサーとして関わっている。
衛生的なナプキンが手に入らず生理障害に苦しむインドの女性たちの現状、そして男性が“生理”について語るだけでも奇異な目で見られるインド社会の中で公開した本作は初登場NO.1の大ヒットを記録! ラクシュミのクライマックスの演説シーンは圧巻で、観客を感動と涙の渦に巻き込む。
バジュランギおじさんと、小さな迷子
Bajrangi Bhaijaan
■監督 カビール・カーン
■製作 サルマン・カーン/カビール・カーン/スニール・ルーラ/ロックライン・ヴェンカテーシュ
■脚本 V.ヴィジャエーンドラ・プラサード/カビール・カーン/パルヴィーズ・シャイク
■撮影 アセーム・ミシュラー
■編集 ラメーシュワル・S・バガト
■音楽 プリータム
■出演 サルマン・カーン/ハルシャーリー・マルホートラ/カリーナ・カプール/ ナワーズッディーン・シッディーキー
©Eros international all rights reserved ©SKF all rights reserved.
【2019年6月22日から2019年6月28日まで上映】
インドからパキスタン――700キロの二人旅が、世界を笑顔に変えていく…
パキスタンの小さな村に住む女の子シャヒーダーは、幼い頃から声が出せない彼女を心配した母親と一緒にインドのイスラム寺院に願掛けに行った帰り道、一人で取り残されてしまう。そんなシャヒーダーが出会ったのは、ヒンドゥー教のハヌマーン神の熱烈な信者のパワンだった。
母親とはぐれたシャヒーダーを預かることにしたパワンだったが、ある日、彼女がパキスタンのイスラム教徒と分かって驚愕する。歴史、宗教、経済など様々な面で激しく対立するインドとパキスタン。それでもパワンは、パスポートもビザもなしに、国境を越えてシャヒーダーを家に送り届けることを決意する――
インド映画世界興収歴代第3位! 世界を笑いと涙に包んだ大ヒット作
底抜けに正直でお人好しなインド人青年と、声を出せないパキスタンからの迷子の少女の二人旅を、国や宗教、人間愛についてのメッセージと、ほっこりとした笑いに包んで描いた本作。2015年に公開されると、インドでは30以上の映画賞を受賞して大ヒットとなり、全世界でも150億円に迫る興収を記録した。3年を経た現在も『ダンガル きっと、つよくなる』『バーフバリ 王の凱旋』に次ぐインド映画の世界興収歴代No.3を継続中だ。
主人公パワンを演じるのは、インド映画界で最も影響力のある<3大カーン>のひとり、サルマン・カーン。本作のプロデューサーも兼ねる彼が、これまでの肉体派アクションスターのイメージを一新してイノセントな魅力で演じ、これまでのキャリアで最高の評価を獲得した。声を出せない迷子シャヒーダー役は、5000人のオーディションから選ばれ、本作で超人気子役となったハルシャーリー・マルホートラ。撮影当時弱冠6歳ながら、表情と目だけで強い印象を残す好演で、新人賞を多数受賞した。監督は『タイガー 伝説のスパイ』でもサルマンとコンビを組んだカビール・カーンが務めた。
【特別レイトショー】セインツ -約束の果て-
【Late show】Ain't Them Bodies Saints
■監督・脚本 デヴィッド・ロウリー
■撮影 ブラッドフォード・ヤング
■音楽 ダニエル・ハート
■出演 ルーニー・マーラ/ケイシー・アフレック/ベン・フォスター/キース・キャラダイン
©2013 ATBS Production LLC
【2019年6月22日から2019年6月28日まで上映】
再び出逢うとき、罪は下されるのか
舞台は1970年代のテキサス。窃盗・強盗を繰り返す一組のカップル、ボブとルース。ルースの体に新しい命が芽生えたことをきっかけに、この強盗を最後に真っ当な人生を歩もうとしていた二人だったが、ついに警察に逮捕されてしまう。ルースの身代わりに刑務所行きになったボブは、ルースが娘を出産したことを知り、まだ見ぬ娘に会うため脱獄を企てる。警察からも追われ、その上、かつて裏切り決別した組織からも追われるボブ、ボブを待ちながら大事な娘をひとり育てるルース、陰でルースを見守りひそかな恋心を抱く地元保安官パトリック。3人のそれぞれの想いが交錯する時、美しくも切ない結末が待っていた…。
『ア・ゴースト・ストーリー』監督×主演が2013年に発表した傑作クライムドラマ
監督は今年『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』、『さらば愛しきアウトロー』と日本公開が続く、デヴィッド・ロウリー。本作は長編二作目となる2013年の作品で、その年のサンダンス映画祭で撮影賞を受賞、カンヌ国際映画祭正式出品など、数々の映画賞を受賞・ノミネート。やりなおすことのできない過去と罪に追われる男たちの運命を描いた『ミスティック・リバー』、そして崇高な愛の叙事詩『トゥ・ザ・ワンダー』を融合させたような大傑作と評された。
現代版の『俺たちに明日はない』との呼び声高い本作で主人公のカップルを演じるのは、『キャロル』のルーニー・マーラと『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のケイシー・アフレック。ふたりは『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』でもロウリー監督と再タッグを組んだ。アメリカ映画界でいま最も魅力的な監督と俳優たちによる珠玉のクライム・ラブストーリー。荒涼としたテキサスの大地に生きる男女の罪を、壮大な映像美で綴った悲劇的な愛の物語が胸を打つ。