
パズー
映画『キムズビデオ』を観ながら、懐かしい記憶が蘇ってきた。
レンタルビデオ世代の自分にとっての「キムズビデオ」は、「ビデオマーケット」だった(映画好きに有名な西新宿の店とはまた違う、かつて都内近郊に数店舗あったレンタルショップです)。店内に入ると漂う独特なスメル。けっして良いとは言い難いその匂いを嗅ぐと、逆に(?)神聖な気持ちになり、“よし!今日は香港映画コーナーでレアな名作を探すぞ!”などと、ディグる気合いが入るのだった。
きっと、いや間違いなくキムズビデオもキムズビデオだけの変な匂いがしたはずだ。映画に出てくるキムズビデオで働いたり通ったりした人たちはみんな、キムズビデオのことをその匂いとともに覚えているのだろうな。場所の記憶というのはそういうものだから。
『ブラック・スワン』などのヒットメーカー、ダーレン・アロノフスキーもキムズビデオの常連だったに違いない。99年のニューヨークを舞台にした最新作『コート・スティーリング』には、セットで完璧に作られたキムズビデオ1号店の外観がはっきり映っている。99年というと、彼の伝説的デビュー作『π』が公開された1年後。もしかしたら『π』もキムズビデオの棚に並べられて、当時のアロノフスキーは喜んだのかもしれない。
重々しい内容をスタイリッシュに撮る作風で知られるアロノフスキーだが、本作はジョーク満載の気持ちのよいアクションムービーに仕上がっていて、同じ監督かと疑うほどだ(ただし主人公がけっこうエグいトラウマを抱えているところはやっぱりアロノフスキーっぽい)。“今は無きニューヨークの景色”をフィルムに再現したいという案外シンプルな思いが、この物語を軽やかで愛すべき作風に仕上げた理由だろう。ちなみに出演者のゾーイ・クラヴィッツも生粋のNYっ子で、かつてキムズビデオに“住んでいた”というほど通っていたそうだ。
そして、モーニング&レイト枠で上映する『悲愁物語』。奇作揃いの鈴木清順のフィルモグラフィの中でもとりわけぶっ飛んだ一作だ。なぜこの映画を今週上映するのかって? お気づきの方もいるでしょう。キムズビデオでイチ押しの商品だったからだ! アロノフスキーも借りていた(たぶん)! アメリカでもカルト的人気が高い『悲愁物語』、ブームの火付け役がキムズビデオだとしたら熱いっす。
そんなこんなで、行ったこともないニューヨークのレンタルショップにひとしおの想いを馳せてみる1週間になりそうです。
コート・スティーリング
Caught Stealing
■監督 ダーレン・アロノフスキー
■原作・脚本 チャーリー・ヒューストン
■撮影 マシュー・リバティーク
■編集 アンドリュー・ワイスブラム
■音楽 ロブ・シモンセン
■出演 オースティン・バトラー/ゾーイ・クラヴィッツ/マット・スミス/レジーナ・キング/ベニート・マルティネス・オカシオ/リーヴ・シュレイバー/ヴィンセント・ドノフリオ
©2025 CTMG. All Rights Reserved.
【2026/3/14(土)~3/20(金)上映】
マフィアもネコも、バッチこい。
1998年、ニューヨーク。メジャーリーグのドラフト候補になるほど将来有望だったものの、運命のいたずらによって夢破れた若者・ハンク。バーテンダーとして働きながら、恋人のイヴォンヌと平和に暮らしていたある日、変わり者の隣人・ラスから突然ネコの世話を頼まれる。親切心から引き受けたのもつかの間、街中のマフィアたちが代わる代わる彼の家へ殴り込んでは暴力に任せて脅迫してくる悪夢のようなの日々が始まった! やがてハンクは、自身が裏社会の大金絡みの事件に巻き込まれてしまったことを知る──。
ネコの世話をする…それだけのはずだった──
ロシア人マフィアにユダヤ人マフィア、プエルトリコ人マフィア、NY市警まで…皆の標的は俺!? これまで人生も野球もチャンスを掴めず人生どん底<コート・スティーリング>な男は、一攫千金の大逆転<ホームラン>をぶっ放つことができるのか──!?
アカデミー賞常連の鬼才ダーレン・アロノフスキー監督が若手No.1スター オースティン・バトラー主演で放つ!予測不能&収拾不能!カオスが嵐を呼ぶ、アクション・クライムムービー!
コート・スティーリングとは──
野球において「盗塁失敗」を意味する用語。または、チャンスを掴もうとして失敗すること。
キムズビデオ
Kim's Video
■監督・編集 アシュレイ・セイビン、デイヴィッド・レッドモン
■撮影 デイヴィッド・レッドモン
■共同編集 マーク・ベッカー
■音楽 エンリコ・ティロッタ
■出演 キム・ヨンマン/ショーン・プライス・ウィリアムズ/アレックス・ロス・ペリー/ディエゴ・ムラーカ/エンリコ・ティロッタ/ヴィットリオ・ズカルビ/ジュゼッペ・ジャンマリナーロ
■2023年シッチェス映画祭ドキュメンタリー部⾨・最優秀作品賞受賞ほか多受賞
©Carnivalesque Films 2023
【2026/3/14(土)~3/20(金)上映】
[映画]を取り返せ!
ニューヨークの映画ファンたちが通い詰めたレンタルビデオショップ「キムズビデオ」。そこは、5万5000本もの貴重かつマニアックな映画の宝庫だった。 時代の変遷で閉店になった2008年、経営者のキム・ヨンマンは、価値ある膨大なコレクションをイタリアのシチリア島にあるサレーミ市に、収蔵・管理、ならびに会員が引き続きそのコレクションにアクセスできる事を条件に譲渡することに。しかし数年後、「キムズビデオ」元会員であるデイヴィッド・レッドモン(本映画監督)が現地を訪れると、活用されずホコリだらけの湿った倉庫でひっそりと息を潜める映画たちを発見。彼は倉庫から助けを求める映画たちの“声”にかき立てられ、彼らを救うべく、警察署長や当時の市長への取材、その陰で暗躍するマフィアへと追跡を続けることに…。
世界最高のレアビデオ・コレクションの数奇な運命を追うドキュメンタリー !
1980年代からアメリカ・ニューヨークのイーストビレッジ(ニューヨークのボヘミアと呼ばれ、カウンターカルチャー運動の中心地)に実在したレンタルビデオショップ「キムズビデオ」の55,000本にも上る唯⼀無⼆なレアビデオ・コレクションの⾏⽅を追ったドキュメンタリー。
前半はドキュメンタリーだが、途中からはふたりの監督と映画の“精霊”たちによって、ある種の意図的な創作物語へと発展していく。映画は56作品の世界のあらゆる映画から映像を引用し、後半の映画の“精霊”たちの出現に説得力を持たせ、未だかつて見たことのないタイプの映画愛と情熱に満ち溢れた傑作となっている。
【モーニング&レイトショー】悲愁物語
【Morning & Late Show】A Tale of Sorrow and Sadness
■監督 鈴木清順
■原作 梶原一騎
■脚本 大和屋竺
■撮影 森勝
■音楽 三保敬太郎/とみたいちろう
■出演 白木葉子/原田芳雄/岡田眞澄/和田浩治/佐野周二/仲谷昇/小池朝雄/宍戸錠/江波杏子
©1977「悲愁物語」製作委員会
【2026/3/14(土)~3/20(金)上映】
ひとりの女として幸せに生きたかった…
日栄レーヨン社長の井上は、企業PRのためのタレントを探していた。そして若くてプロポーション抜群のプロゴルファー・桜庭れい子の起用を決定。彼女をまず女子プロゴルフ界のチャンピオンにしなければと、雑誌「パワーゴルフ」の編集長でれい子の恋人でもある三宅に特訓を頼むのだった。厳しいトレーニングが昼夜続くも、れい子はその特訓に耐え、全日本女子プロゴルフ選手権に優勝。れい子の人気は爆発。日栄レーヨンと専属タレント契約を結び、大金を手にしたれい子は大邸宅を構え、テレビにも起用されるほどのスターに。しかし、近所の主婦たちの憧れは、しだいにドス黒い嫉妬へと変わっていき…。
男たちの苛烈な欲望と、女たちの恐ろしい嫉妬 その狭間に立つ虚飾の人形が迎える運命とは…
鈴木清順監督が『殺しの烙印』以来10年ぶりにメガホンを取った作品。若く美しい女子プロゴルファーが、ハード・トレーニングに耐え、大スターの地位を獲得するが、やがて住民エゴむき出しの主婦族によって抹殺されてしまう悲劇を描く。無残美の映像が語る異色大作!





















