
もっさ
今週の早稲田松竹は、「ライアン・クーグラー×ジェームズ・ガン わたしたちはどこからきたのか ~ルーツをめぐる2つのアメリカ映画~」と題しまして、間違いなく今年の話題作『罪人たち』と『スーパーマン』をお届けいたします! 時代もジャンルもまったく違う作品ですが、いまのアメリカを語る上で欠かせない“ルーツ”について、それぞれ異なるアプローチで鮮やかに描き出す二本立てです。
アメコミヒーローの原点と言われるスーパーマン。アウトローなキャラクターを調理するのが得意なジェームズ・ガン監督が新作を撮ると聞き、正直、意外だったのですが…観たら違和感どころかしっくりきすぎてびっくり。本作もいつも通り、ガン監督ならではのギャグ満載で笑いあり涙ありアクションたっぷりの極上エンタメ作品として仕上がっております。
ガン監督は「スーパーマン」を「アメリカの物語」だと語っています。スーパーマンは赤ちゃんの頃、遠いクリプトン星から地球に送り込まれた異星人…つまり“移民”なのだと言います。スーパーマンというキャラクターが生まれたのは1930年代、原作者のシーゲル&シャスターもユダヤ系移民の子どもでした。「弱い者が暴力に押し潰されない世界を作りたい」という願いを込めたキャラクターは、時を超えてアメリカのみならず世界中で愛され続けています。しかし、本作では2025年の現代らしくスーパーマンが自身のルーツを模索し、葛藤する姿も描かれます。それが一層人間らしく、私達にとって身近な存在に感じさせるのです。スーパーマンが「人が死んでいるんだ! 助けなきゃ!」とまっすぐに立ち向かう姿には、“人間の基本的な親切心こそが大切な価値だ”というガン監督の強い想いが込められています。大切なのは、どこで生まれて何を持つかではなく、何をするかだ――。そんなシンプルなメッセージが心に響くはず。
一方、ライアン・クーグラー監督の最新作『罪人たち』の舞台は1932年のミシシッピ。スーパーマンが生まれた時代のアメリカを、まったく別の角度から描く作品です。差別、貧困、暴力などの社会問題に満ちた南部の黒人コミュニティで、一攫千金を狙う双子の兄弟が、働く人々の憩いの場である酒場「ジューク・ジョイント」を開きます。しかし、祝祭の夜は招かれざる客により悪夢へと一変し、物語は予測不能な方向へ。まさかのブルース×ヴァンパイアという大胆なジャンルMIXホラーです!
ホラーとは言え、ただ怖いだけではありません。これまで一貫して黒人の歴史と現在を描いてきたクーグラー監督。その手腕は本作でも発揮されております。物語の出発点となったのは、監督の敬愛する大叔父が熱中していたデルタ・ブルースへの想いだったそう。アメリカ音楽のルーツともいえるブルースが、時代を越え、過去から現在、そして未来へとつながっていく――その流れを体現する中盤のダンスホールシーンは、まさに圧巻。観ているこちらまで魂が揺さぶられます。
物語が急展開し、ヴァンパイアの登場でテンションが爆上がり、エンタメホラーとしても最高のラストを迎えるのですが、鑑賞後「凄いものを観た!」という高ぶりと「一体あれはどういうこと?」がごちゃ混ぜになり『罪人たち』が頭から離れなくなりました。“血を吸って仲間に引き入れる”ヴァンパイアという存在を、“黒人文化を搾取してきたアメリカの歴史”というメタファーで描く複雑な構造は、一見しただけでは理解が追い付かないところもありますが、何度観ても新たな発見がある、噛めば噛むほど味が出るオブ・ザ・イヤー受賞作品なのは間違いありません!
さて、今週のレイトショーでは、そんな『罪人たち』の展開の変貌ぶりを先取りするような怪作、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』をお届けします。監督ロバート・ロドリゲス×脚本クエンティン・タランティーノによる伝説級カオスムービー! 前半と後半でジャンルがひっくり返る“あの快感”…あまりのひっくり返りっぷりに、思わず声をあげて笑ってしまうこと間違いなし(?)。『罪人たち』は様々な作品から影響を受けたとクーグラー監督は公言しておりますが、本作もその一つ。単品で観ても、続けて観比べてみても面白いですよ!
空飛ぶ移民ヒーロー、苦しみながら踊り狂う南部の人々、そして吸血鬼と闘うアウトローたち…。一見バラバラな組み合わせが、スクリーンで響き合う一週間。ぜひ早稲田松竹で、このカオスと熱気を味わってください!
スーパーマン
Superman
■監督・脚本 ジェームズ・ガン
■プロデューサー ピーター・サフラン
■撮影 ヘンリー・ブラハム
■編集 ウィリアム・ホイ/クレイグ・アルパート
■音楽 ジョン・マーフィ/デヴィッド・フレミング
■出演 デイビッド・コレンスウェット/レイチェル・ブロズナハン/ニコラス・ホルト/エディ・ガテギ/ネイサン・フィリオン/イザベラ・メルセド/アンソニー・キャリガン/マリア・ガブリエラ・デ・ファリア/サラ・サンパイオ/フランク・グリロ/ブラッドリー・クーパー/アンジェラ・サラフィアン
© & TM DC © 2025 WBEI
【2025/11/29(土)~12/5(金)上映】
―LOOK UP 空を見ろ― 彼の名は、“スーパーマン”︕
大手メディア「デイリー・プラネット」で平凡に働くクラーク・ケント、彼の本当の正体は人々を守ヒーロー「スーパーマン」。子どもも大人も、愛する地球で生きるすべての人を守り救うため、日々戦うスーパーマンは、誰からも愛される存在。そんな中、彼を地球の脅威とみなし暗躍する、最高の頭脳を持つ宿敵=天才科学者にして大富豪、レックス・ルーサーの世界を巻き込む綿密な計画が動き出す――。
アメコミ史上最も歴史のあるヒーロー=スーパーヒーローの原点として世界中で愛され続けてきた〈スーパーマン〉の完全新作映画!
全世界で特大メガヒットを記録した『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのジェームズ・ガン監督が、ピーター・サフランと共に2022年10月にDCスタジオのトップに就任して以降、記念すべき初のDCコミックスの映画作品。本作は新たなDCユニバースの最初の映画として、これまで公開されたDCコミックスのキャラクターが登場する作品を一切観ていなくても楽しめる作りになっており、過去作とのつながりやキャラクター同士の関係性などを何も気にすることなく、思う存分スーパーマンの活躍を楽しむことができる。
本作のスーパーマンは、決して完全無欠の最強スーパーヒーローではない。スーパーマンが爆発から少女を守るシーン、子供がスーパーマンに何かを願うシーンなど、希望の象徴としてのスーパーマンが描かれる反面、市民が彼を取り囲み、石を投げつけるシーンも映し出されており、彼の存在が決して、絶対的で完全なものではないことが伺える。ジェームズ・ガン監督は「スーパーマンが一人の“人間”としてどういう人なのかを描いている。」と語るように、今作で描かれるスーパーマンは、これまでとは違い、等身大の“人間”としての姿が全面に描き出されている。
罪人たち
Sinners
■監督・脚本 ライアン・クーグラー
■製作 ルドウィグ・ゴランソン/ウィル・グリーンフィールド/レベッカ・チョウ
■撮影 オータム・デュラルド・アーカポー
■編集 マイケル・P・ショーヴァー
■音楽 ルドウィグ・ゴランソン
■出演 マイケル・B・ジョーダン/ヘイリー・スタインフェルド/マイルズ・ケイトン/ジャック・オコンネル/ウンミ・モサク/ジェイミー・ローソン/オマー・ミラー/デルロイ・リンドー
© 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.
Dolby Cinema® is a registered trademark of Dolby Laboratories
【2025/11/29(土)~12/5(金)上映】
悪魔と共に、踊り狂い、夜明けまで生き残れ!
1930年代の信仰深いアメリカ南部の田舎町。双子の兄弟スモークとスタックは、かつての故郷で一攫千金の夢を賭けた商売を計画する。それは、当時禁じられていた酒や音楽をふるまう、この世の欲望を詰め込んだようなダンスホールだった。オープン初日の夜、多くの客たちが宴に熱狂する。ある招かざる者たちが現れるまでは…。最高の歓喜は、一瞬にして理不尽な絶望にのみ込まれ、人知を超えた狂乱の幕が開ける。果たして兄弟は、夜明けまで、生き残ることが出来るのか――。
誰も見たことがない”新たな恐怖”を描くサバイバルホラー!
本作は、オリジナル作品として“ここ10年で最大のオープニング成績”を樹立し、全米興行ランキング2週連続No.1を獲得! レビューサイト”ロッテントマト”で批評家スコア98%&観客スコア97%の驚異の評価を記録! 映画館の出口調査“シネマスコア”でホラー映画史上最高評価を獲得!「今年最高の作品」として早くも本年度アカデミー賞候補に名乗りを挙げた、世界騒然ノンストップ・サバイバルホラーだ。
監督は、アメコミ映画史上初のアカデミー賞作品賞ノミネートを果たし社会現象を巻き起こした『ブラックパンサー』や、映画史に輝く『ロッキー』を完全復活させ多くの支持を集めた『クリード』シリーズなど、ハリウッド映画界をリードする若き天才ライアン・クーグラー。『ブラックパンサー』制作チームが再集結し、“人生最高の夜が、人生最後の夜へと変貌する”恐怖を追体験させるため、IMAX®70mmフィルムカメラとウルトラ・パナビジョンカメラを組み合わせて全編を撮影。圧倒的な没入感で観客を魅了する、比類なき傑作が完成した。
【レイトショー】フロム・ダスク・ティル・ドーン
【Late Show】From Dusk Till Dawn
■監督・編集 ロバート・ロドリゲス
■製作総指揮 ローレンス・ベンダー/ロバート・ロドリゲス/クエンティン・タランティーノ
■原案 ロバート・カーツマン
■脚本 クエンティン・タランティーノ
■撮影 ギレルモ・ナヴァロ
■音楽 グレーム・レヴェル
■出演 ジョージ・クルーニー/クエンティン・タランティーノ/ハーヴェイ・カイテル/ジュリエット・ルイス/サルマ・ハエック/フレッド・ウィリアムソン/トム・サヴィーニ/チーチ・マリン
Images courtesy of Park Circus/Paramount
【2025/11/29(土)~12/5(金)上映】
EVERYBODY, BE COOL!(返り討ちにしてやるぜ!)
危険な極悪犯罪者コンビ、セス&リチャード・ゲッコー兄弟は人質を取り、メキシコへ逃亡する。しかしその途中、荒野にそびえ立つ亭楽の館で、彼らは想像を絶する恐怖に遭遇する…。店のバーテン、バンド、ダンサーたちはみな鮮血に飢えたヴァンパイアだったのだ! 群れをなして襲いかかる恐怖。夕暮れから夜明けまで(フロム・ダスク・ティル・ドーン)、善悪入り乱れての激闘開始! 生き延びることができるのは人間か、ヴァンパイアか!?
特殊メイクアーティストのロバート・カーツマンの原案を元に、『パルプ・フィクション』のクエンティン・タランティーノが脚本を担当。ゲッコー兄弟の弟リチャード役で出演もしている。監督には『デスペラード』ロバート・ロドリゲス。オムニバス映画『フォー・ルームス』でも競作した2人の若き鬼才映画作家がタッグを組んだ、超アクティブでスリリングな作品となっている。
人質になりながらもセスと共にこの恐怖と闘うことになる親子を演ずるのは、ハーヴェイ・カイテルとジュリエット・ルイスというキレたら怖いものなしの二人。これはもはや凶暴者の共謀。ルール無視の108分。これまでの映画常識を全く超越し、全米ナンバーワンヒットを記録したホラーアクション!





















