まつげ
思い描いていた大学生活とはほど遠い冴えない毎日を送る小西君は、晴れていても傘をさしてキャンパスを歩いている。そんな小西君は、いつも一人でいるお団子頭の桜田さんの凛々しい姿に目を奪われた。勇気を出して桜田さんの隣の席に座る小西君。すぐに二人は意気投合し、彼女もお団子頭は自分を奮い立たせる「武装」だと知る。尽きない会話の中で、桜田さんが「毎日楽しいって思いたい。今日の空が一番好き、って思いたい」と何気なく口にした言葉が小西君に刺さる。苦手だったコミュニケーションが、桜田さんとならできたのだった。今までは殻にこもっていた小西君の大学生活が、桜田さんとの出会いによって一変していく。
一方『ファーストキス 1ST KISS』は、結婚15年目のカンナが主人公。駈との夫婦生活は時と共にすれ違い、終わりを迎えようとしていた。ある日、夫の駈は離婚届をついでに出すと言い、仕事へと出かけ、この世を去ってしまう。カンナは「どうせなら離婚届出してくれれば..」と夫の遺影を見つめなら思いにふけり、三年待ちだった通販の餃子を焦がしてしまう。そんなカンナは、ひょんなことから駈と初めて出会った15年前の夏にタイムトラベルをして、若き日の駆ともう一度出会うことになる。
「久しぶり」
「どこかでお会いした事ありましたっけ?」
「いえ、まだはじめてです」
カンナは上手く過去を書き換えれば、駈が死なずに済むかも知れないと思うようになる。そして、駈と出会った日の夏へと繰り返しタイムスリップしていく中で、15年の夫婦生活で埋もれ、忘れていた感情が再びカンナの心に湧き上がる。
今週は、大学生の思いがけない出会いから始まる恋物語『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』と、結婚して15年目の夫婦が織りなす愛の物語『ファーストキス 1ST KISS』の二本立てです。カンナは15年間の夫婦生活で、縺れ絡まってしまった運命の赤い糸を解いていくように、出会った頃の駈と一所懸命に対峙していきます。互いにキャンパスの隅で孤独に尖っていた小西君と桜田さんも偶然の出会いをきっかけに、一筋縄ではいかない世の中を迷いもがきながらも外の世界と向き合い始めます。
桜田さんが、小西君と楽しそうに会話する中で「私たちセレンディピティだな」と言います。行動を起こすことで、思いがけない幸運な偶然を引き寄せる事を指す言葉です。ひょんなことから今までの殻を破って相手を想い、勇気を出して一歩踏みこんでゆく主人公の姿は、見ている我々にも勇気を与えてくれます。また、その一歩を踏み出すことで一人では見ることのできなかった、ワクワクする豊かな世界がそこにはあるのです。
互いが面と向かって心を通わせる事。それは私たちが持っている、セレンディピティなのかもしれません。
ファーストキス 1ST KISS
1st Kiss
■監督 塚原あゆ子
■脚本 坂元裕二
■撮影 四宮秀俊
■編集 西尾光男
■音楽 岩崎太整
■出演 松たか子/松村北斗/吉岡里帆/森七菜/ YOU/竹原ピストル/松田大輔/和田雅成/ 鈴木慶一/神野三鈴/リリー・フランキー
©2025「1ST KISS」製作委員会
【2025/9/13(土)~9/19(金)上映】
私はその日、15年前の夫に恋をした。
結婚して15年目、事故で夫が死んだ。夫とは長く倦怠期で、不仲なままだった。残された妻・カンナは第二の人生を歩もうとしていた矢先、タイムトラベルする術を手に入れる。戻った過去には、彼女と出会う直前の夫の姿があった。出会った頃の若き日の夫を見て、彼女は思う。わたしはやっぱりこの人のことが好きだった。夫に再会した彼女はもう一度彼と恋に落ちる。そして思う。15年後事故死してしまう彼を救わなくては――。
ラブストーリーの名手が紡ぐ、集大成にして最高傑作の誕生。
今を生きる人たちの心情をリアルにも洒脱に描き出し、日本のみならず、アジア圏でも絶大な支持を得る、脚本家・坂元裕二。是枝裕和監督『怪物』では、カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。その物語は世界に届くことを証明した。そんな坂元が『ラストマイル』『グランメゾン・パリ』の塚原あゆ子監督と組み、カンヌでの受賞後初となるオリジナル劇場映画を送り出す。
主人公・硯カンナを演じるのは、TVドラマ「カルテット」や「大豆田とわ子と三人の元夫」など、これまでにも坂元作品の世界観を体現してきた、松たか子。そして、カンナの夫・硯駈をSixTONES・松村北斗が演じる。初共演となる松と松村、そして初タッグとなる坂元と塚原が紡ぎ出す、『ファーストキス 1ST KISS』。誰もが感動を覚えながら、そこに待つのは初めて出会うに違いない、心揺さぶるラブストーリーが、世界を席巻する。
今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は
She Taught Me Serendipity
■監督・脚本 大九明子
■原作 福徳秀介『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(小学館刊)
■撮影 中村夏葉
■編集 米田博之
■音楽プロデューサー 田井モトヨシ
■出演 萩原利久/河合優実/伊東蒼/黒崎煌代/ 安齋肇/浅香航大/松本穂香/古田新太
■第37回東京国際映画祭コンペティション部門公式出品作品
©2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会
【2025/9/13(土)~9/19(金)上映】
ずっと、なんてない。知ってたけど、知らなかった。
思い描いていた大学生活とはほど遠い、冴えない毎日を送る小西。学内唯一の友人・山根や銭湯のバイト仲間・さっちゃんとは、他愛もないことでふざけあう日々。ある日の授業終わり、お団子頭の桜田の凛々しい姿に目を奪われた。思い切って声をかけると、拍子抜けするほど偶然が重なり急速に意気投合する。会話が尽きない中、「毎日楽しいって思いたい。今日の空が一番好き、って思いたい」と桜田が何気なく口にした言葉が胸に刺さる。その言葉は、奇しくも、半年前に亡くなった大好きな祖母の言葉と同じで、桜田と出会えた喜びにひとり震える。ようやく自分を取り巻く世界を少しだけ愛せそうになった矢先、運命を変える衝撃の出来事が二人を襲うー。
唯一無二のコント職人が小説家デビューを果たした珠玉の恋愛小説を映画化。思いがけない出会いから始まる最高純度のラブストーリー!
熱狂的ファンも多いコント職人ジャルジャルの福徳秀介が2020年に小説家デビューを果たした珠玉の恋愛小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』。監督を務めるのは映画『勝手にふるえてろ』、『私をくいとめて』など、数々の話題作を手がける大九明子。個性的かつリアリティあふれる女性主人公を描くことが多かった監督が、恋愛作品としては初の男性主人公の物語に挑戦。
主人公の冴えない毎日を送る大学生・小西徹を演じるのは、萩原利久。小西が突然恋に落ちるヒロイン・桜田花には、話題のドラマ「不適切にもほどがある!」で一躍大ブレイクを果たした河合優実。小西のバイト仲間・さっちゃんには、『湯を沸かすほどの熱い愛』で注目され、以降多くの話題作に途切れることなく出演し続ける注目の若手俳優・伊東蒼。小西の唯一の友人・山根には『さよなら ほやマン』で鮮烈な印象を残した黒崎煌代。今最も話題の俳優を迎え、観客や視聴者から絶大なる共感を呼ぶ大九監督の新境地にして最高傑作が完成した。
物語のキーとなるレジェンドバンド“スピッツ”の楽曲「初恋クレイジー」は、スピッツが楽曲提供を快諾。まるで楽曲自体が登場人物の1人のような、強烈な存在感を放つ。また原作者・福徳の出身校である関西大学が、撮影に全面協力。原作の世界観そのままに、小西の生々しい日常を映し出すことに一役買っている。