フレデリック・ワイズマン監督特集 ★特別興行・全作一本立て上映 | 早稲田松竹

【2025/8/9(土)~8/15(金)】『至福のレストラン 三つ星トロワグロ』『基礎訓練』『パナマ運河地帯』『チチカット・フォーリーズ』『高校2』『最後の手紙』『ボクシング・ジム』『大学—At Berkeley』『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』

フレデリック・ワイズマン監督は1930年生まれの今年で御年95歳。1967年の初監督作「チチカット・フォーリーズ」以降、半世紀以上にも渡り様々な施設や組織、町を追ってきた。病院、学校、美術館…彼の作品は、私たちに身近な場所もあれば、なかなか見ることのできない貴重な社会の裏側も見ることができる。

ワイズマンは、カメラを通してありのままの現実を映し出しているのに、誰かにとっての日常の些細な出来事も「映画」にしてしまうから不思議だ。膨大な記録映像から自ら編集を手掛ける手法はずっと変わらずに、人と人が織りなす会話や行動、視線、表情にリズムをつけていく。そうした細部に宿るいきいきとした人間への洞察を見ると、彼が人、社会を撮り続ける理由がなんとなくわかる気がするのだ。

今回の上映では、彼のデビュー作と最新作を含め、上映機会の少ない貴重な初期作品からワイズマン作品には珍しい劇映画まで、幅広いラインナップをお届けします。長尺なものが多いなか、時を忘れて見入ってしまうのが彼の作品の魅力だろう。気になる施設、題材で観るもよし、全制覇するも、気になった1本をじっくり楽しむのもよし、心から彼の作品を楽しんでいただきたい。

ワイズマンのまなざしを通して、どんな世界が垣間見れるのか、どんな人たち、どんな会話、どんな場面に出会えるのか…。彼の飽くなき探求心が結実した傑作ドキュメンタリーをぜひお見逃しなく。

【1本立て】チチカット・フォーリーズ
Titicut Follies

フレデリック・ワイズマン監督作品/1967年/アメリカ/84分/Blu-ray/スタンダード

■監督 フレデリック・ワイズマン
■撮影 ジョン・マーシャル

作品提供:コミュニティシネマセンター

【2025/8/9(土)~8/15(金)上映】

マサチューセッツ州ブリッジウォーターにある精神障害犯罪者のための州立刑務所マサチューセッツ矯正院の日常を克明に描いた作品。収容者が、看守やソーシャル・ワーカー、心理学者たちにどのように取り扱われているかが様々な側面から記録されている。合衆国裁判所で一般上映が禁止された唯一の作品であり、永年に渡る裁判の末、91年にようやく上映が許可された。

【1本立て】基礎訓練
Basic Training

フレデリック・ワイズマン監督作品/1971年/アメリカ/89分/Blu-ray/スタンダード

■監督 フレデリック・ワイズマン

作品提供:コミュニティシネマセンター

【2025/8/9(土)~8/15(金)上映】

一般の入隊志願者たちを、一人前の兵隊に仕立てるための9 週間にわたるアメリカ陸軍の基礎訓練の様子を描く。行進、格闘などの教練の場面、M-16自動小銃や銃剣の使い方、夜間匍匐訓練、潜伏訓練、イデオロギー教育と洗脳に対抗する訓練などなど……。志願者をアイデンティティ喪失の瀬戸際まで追い込む、非人間的な状況において、あぶり出されるのは人間の条件なのかもしれない。

【1本立て】パナマ運河地帯
Canal Zone

フレデリック・ワイズマン監督作品/1977年/アメリカ/174分/Blu-ray/スタンダード

■監督 フレデリック・ワイズマン

作品提供:コミュニティシネマセンター

【2025/8/9(土)~8/15(金)上映】

永年、事実上アメリカの植民地だったパナマ運河地帯。1977年にカーター大統領は、将来的に運河地帯を返還すること、新運河条約を締結し、運河を米パ両国で共同管理することを決めた。運河の運用、運河を通過する船舶、民政の側面、軍の仕事などが絡み合い、政府機関、ビジネスマン、軍、民間人など、様々な人々が行き交う。ここに暮らすアメリカ人の生活の社会的、宗教的、娯楽的側面が描かれる。同地帯は1999年12月31日にパナマに完全返還された。

【1本立て】高校2
High School II

フレデリック・ワイズマン監督作品/1994年/アメリカ/220分(途中休憩あり)/Blu-ray

■監督 フレデリック・ワイズマン

作品提供:コミュニティシネマセンター

【2025/8/9(土)~8/15(金)上映】

ニューヨークのハーレム地区スペイン語圏にある、『ミュージック・オブ・ハート』の舞台ともなった進学校。革新的教育者デボラ・マイヤーが設立したこの学校が誇るユニークなカリキュラム、証拠の重視、複数の視点・つながりや関係への意識、可能性や価値判断の重視といった教育内容ばかりでなく、文系と理系の学校活動、父兄会議、人種、階級、性別についての討論、職員会議、性教育、生徒による紛争解決、生徒会の会議などが描かれる。

【1本立て】最後の手紙
The Last Letter

フレデリック・ワイズマン監督作品/2002年/フランス・アメリカ/62分/35mm

■監督 フレデリック・ワイズマン

■出演 カトリーヌ・サミィ

作品提供:コミュニティシネマセンター

【2025/8/9(土)~8/15(金)上映】

ワイズマンが、コメディ・フランセーズの女優カトリーヌ・サミィのために脚色した、ワシーリー・グロスマンの小説「人生と運命」の一章を映画化したもの。1941年のウクライナ、ゲットーのユダヤ人たちはナチによって全員殺されることになった。迫りくる恐怖の中、年老いた女医アンナ・セミョーノワは、ナチの手を逃れた息子に宛てた手紙を口述筆記する。ゲットーでの生活を詳察し、自分の人生を振り返り、死と立ち向かう、この女性の恐怖、勇気、弱さ、そして威厳が浮かび上がる。

【1本立て】ボクシング・ジム
Boxing Gym

フレデリック・ワイズマン監督作品/2010年/アメリカ/91分/Blu-ray

■監督 フレデリック・ワイズマン

作品提供:コミュニティシネマセンター

【2025/8/9(土)~8/15(金)上映】

舞台はテキサス州オースティンのボクシング・ジム。元プロボクサー、リチャード・ロードが16 年前に開いたロード・ジムである。ここには年齢・人種・職種・性別などの違う様々な人々がやってくる。大人も子供も男も女も、プロを目指す者もスポーツ好きなアマチュアも体力をつけたい青少年も、医者、弁護士、裁判官、ビジネスマン、移民、それにプロボクサーも。ボクシング・ジムは、人々が出会い、話し、鍛える、人間のるつぼ……。まさにアメリカそのものだ。

【1本立て】大学—At Berkeley
At Berkeley

フレデリック・ワイズマン監督作品/2013年/アメリカ/244分(途中休憩あり)/DCP

■監督 フレデリック・ワイズマン

作品提供:コミュニティシネマセンター

【2025/8/9(土)~8/15(金)上映】

カリフォルニア大学バークレー校。アメリカで最も古く権威のある総合大学で、世界有数の研究教育機関で、学生運動の拠点にもなったリベラルな校風でも知られる。授業や研究活動から、学費に対するデモ、運営のための無数の会議や行政との折衝など多視点で“大学”を記録した。

【1本立て】ナショナル・ギャラリー 英国の至宝
National Gallery

フレデリック・ワイズマン監督作品/2014年/アメリカ・フランス/181分/DCP

■監督・編集・録音 フレデリック・ワイズマン
■撮影 ジョン・デイヴィー

■出演 ナショナル・ギャラリーのスタッフほか/エドワード・ワトソン&リアン・ベンジャミン(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)

■2014年ヴェネチア国際映画祭栄誉金獅子賞受賞記念/2014年カンヌ国際映画祭監督週間正式出品

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【2025/8/9(土)~8/15(金)上映】

巨匠フレデリック・ワイズマン監督が、英国の〈小さな美術館〉が〈世界最高峰〉と讃えられる─その秘密に迫る!

フレデリック・ワイズマン監督が30年もの間、いつか撮影したいと切望し続けた英国の国立美術館、ナショナル・ギャラリー。ロンドンの中心地であるトラファルガー広場に位置するこの美術館、所蔵作品は2,300点余りと決して多くはないが、年間500万人以上の人が訪れる世界トップレベル。しかし、建物や設備もパリのルーヴルやニューヨークのメトロポリタンに比べれば、小さな美術館だ。だが、それにもかかわらず、ナショナル・ギャラリーが紹介される時には、必ずと言っていいほど「世界最高峰」「英国の至宝」「驚異のコレクション」などの栄えある枕詞が惜しみなく散りばめられる。果たして、その理由は、いったいどこにあるのか? 1824年の設立から190年、人々に愛されつづける秘密とは─?

ナショナル・ギャラリー全館に3カ月間潜入し、すべてをありのままにカメラに収め、アートの世界で遊ぶ喜びを贈る、知性と心を刺激する至福のドキュメンタリー!

【1本立て】至福のレストラン 三つ星トロワグロ
Menus-plaisirs - Les Troisgros

フレデリック・ワイズマン監督作品/2023年/アメリカ/240分(途中休憩あり)/DCP/アメリカンビスタ

■監督・製作・編集・録音 フレデリック・ワイズマン 
■撮影 ジェームス・ビショップ

■出演 ミッシェル・トロワグロ/セザール・トロワグロ/レオ・トロワグロ/マリー=ピエール・トロワグロ/トロワグロで働くスタッフほか

■第58回全米映画批評家協会賞ノンフィクション映画賞受賞/第89回ニューヨーク映画批評家協会賞ノンフィクション映画賞受賞/第49回ロサンゼルス映画批評家協会賞ドキュメンタリー映画賞受賞 ほか多数受賞・ノミネート

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【2025/8/9(土)~8/15(金)上映】

人生に記憶を刻む体験を。トロワグロがお連れします。

フランス・パリからロアンヌへ列車と車を乗りついで、4時間の旅。樹々や湖に囲まれた印象派の絵画のような村ウーシュに、世界の美食家たちが、生涯で一度は訪れたいと夢見る三つ星レストラン〈トロワグロ〉がある――。〈トロワグロ〉とは、トロワグロ・ファミリーが、1930年にフランスの中部で創業したフレンチレストランだ。映画では、2017年に建築家パトリック・ブシャンがウーシュに建てた、周囲の自然と解け合いながらそこにモダンな一筆を加えた新しいレストランを主な舞台に、オーナーシェフ3代目のミッシェルと4代目のセザール、さらにスタッフたちの終わりのない食への追求の日々を捉える。

94歳の巨匠フレデリック・ワイズマン監督が、ミシュラン三つ星に55年間輝き続けるフレンチレストラン〈トロワグロ〉の全貌に迫るドキュメンタリー!

ドキュメンタリー映画に才能と人生を捧げ続け、2014年にヴェネチア国際映画祭で栄誉金獅子賞、2016年にはアカデミー賞名誉賞を受賞し、〈現存する最も偉大なドキュメンタリー作家〉の称号を手にしたフレデリック・ワイズマン監督。1967年に発表された第1作目から、ナレーション・インタビュー・音楽は一切なしという、当時も今も革新的なスタンスを貫く唯一無二のフィルモグラフィーで、全世界から敬愛される巨匠だ。バレエ・美術などのアート分野から、医療・教育・行政など福祉分野まで、あらゆる業界に踏み込んできた巨匠が、94歳にしてはじめて料理芸術の世界に挑んだ。

ワイズマン監督がカメラを向けたのは、55年もの間、ミシュラン三つ星に輝き続けるフレンチレストラン〈トロワグロ〉。トロワグロで友人とテーブルを囲んだワイズマン監督が、レストランで繰り広げられたもてなしと料理という“芸術”に心を打たれ、その場でドキュメンタリー映画を撮らせてほしいとオファー、4代目シェフのセザール・トロワグロが快諾し実現した。2022年からスタートした撮影と編集を経て完成した本作は、2023年全米映画批評家協会賞ノンフィクション映画賞を始め、数々の誉れ高いドキュメンタリー映画賞を独占している。