
すみちゃん
『落下の王国』では橋から落ちて大怪我を負ったスタントマンのロイと、木から落ちて腕を骨折した5才の少女アレクサンドリアが偶然にも病院で出会うことになる。もし落下していなかったら出会うことのなかった二人。アレクサンドリアはとにかく好奇心旺盛で、治療するためとは言え、5才の彼女にとって入院生活は今まで会うことのなかった人と長い時間関わることのできる特別な時間だ。
小さい頃、わたしも入院した時につかの間のお友達ができたことがあったし、病院食で出たリンゴジャムの味がいまだに忘れられない。病院という傷や痛み、苦しみを抱えた人々のいる場所で見つける喜びは、何にも代えがたく記憶に残っている。だからこそ、ロイがアレクサンドリアへ聞かせる冒険譚は、たとえ喜ばせようと思って紡いでいなくとも、彼女の中ではかけがえのない物語となり、その期待と興奮によって創造されたイメージは、壮大な情景と美しさに溢れかえっている!
『ぼくのエリ 200歳の少女』では、いじめられて友達のいない少年オスカーが、隣に引っ越してきたエリに恋をする。しかし、エリはなんとヴァンパイアで、淡い恋の行方は予期せぬ展開を見せてゆく。映画の冒頭からすでに雪の降る淡彩な映像と不穏な音楽に、これから何か怖いことが起こるのではないか…と身構えさせる。けれど、心の通じ合うオスカーとエリのやりとりは微笑ましく、そうかと思うとやはりヴァンパイアは血を必要としていて…と、1つの映画を観ているとは思えないような出来事が続いてゆく。それはきっと、一見、人間との違いを感じさせない日常的な一面がありながらも、血への欲望に抗えないヴァンパイアの衝動的な世界を、エリは何百年も生きているということなのだろう。そしてオスカーはその困難な日々を、エリへの純粋な気持ちゆえに共有することを厭わない。
全く違う生き方をしてきた者たちが、ひょんなことで出会い、今までにない経験をしていく姿に、わたしはときめきを覚えた。そして出会うことで共有された物語をきっかけに、自暴自棄になっているロイが、いじめにあっているオスカーが救われていく…。
乗り越えられない壁を感じた時、ふと目にした映画や本の物語が、自分に思わぬ力を与えてくれたことはないだろうか? 登場人物の言葉がまるで自分に言われたみたいにぶっ刺さって、次の日から少し前向きになれるみたいに、ロイもオスカーも、物語が自分自身の人生に溶け込んでいき、彼らの人生を変えていったのだ。そのきっかけを作った、アレクサンドリアとエリの勇敢さは、きっと映画を見終わった後、あなたの心に残るに違いない。
ぼくのエリ 200歳の少女
Let the Right One In
■監督 トーマス・アルフレッドソン
■原作・脚本 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト「モールス」(ハヤカワ文庫刊)
■撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ
■編集 ディーノ・ヨンサーテル/トーマス・アルフレッドソン
■作曲 ヨハン・ソーデルクヴィスト
■出演 カーレ・ヘーデブラント/リーナ・レアンデション/ペール・ラグナル/ヘンリック・ダール/カーリン・ベリィクイスト/ペーテル・カールベリ/イーカ・ノード/ミカエル・ラーム/カール=ロベルト・リンドグレン/アンダーシュ・テー・ペードゥ/パレ・オロフソン
■2008年トライベッカ国際映画祭最優秀作品賞受賞/スウェーデン・アカデミー賞最優秀監督賞ほか主要5部門受賞/ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞ノミネート/シッチェス国際映画祭メリエス賞金賞受賞 ほか多数受賞・ノミネート
©EFTI MMVIII© EFTI_Hoyte van Hoytema
【2026/8/22(土)~8/28(金)上映】
怖ろしくも、哀しく、美しい 12歳の初恋
遊び盛りの12歳なのにひとりも友だちがいないオスカーは、隣の家に引っ越してきたエリに初めての恋をする。ぼさぼさの黒髪に青白い顔をしていて、いつも夜にしか姿を現さないエリは、知れば知るほど謎めいていた。オスカーと同じ12歳だというのに自分の誕生日さえ知らないのだ。
オスカーがエリと出会った同じ頃、むごたらしい殺人事件が続発し、街には不穏な空気が流れる。そんな中オスカーは重大な秘密を知ってしまう。それは、エリがずっと昔から12歳だったという衝撃の真実。エリは町から町へと移り住みながら人間の血を吸い、200年も生きながらえてきたヴァンパイアだったのだ…。
思春期の入り口をさまよう少年たちの切なく、危うく、そして美しい<目覚め>を見つめた奇跡のメルヘン
原作は<スウェーデンのスティーヴン・キング>との異名を持つヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストのベストセラー「モールス」。監督は『裏切りのサーカス』『ギャング・カルテット 世紀の怪盗アンサンブル』のトーマス・アルフレッドソン。今作で本国スウェーデンのアカデミー賞での5部門受賞はもとより、欧米からアジアにかけて60もの賞を獲得。さらにはハリウッドでリメイクされるなど(『モールス』)、世界各国で大反響を呼び起こした。
北欧の風土に根ざした愁いを帯びた詩情、ぞっと背筋の凍りつく恐怖とサスペンス、初恋の甘酸っぱいせつなさと痛み――意外性に満ちたエッセンスが繊細に溶け合った本作。この世の孤独を抱いた少年と孤高のヴァンパイアがめぐり合い、永遠の友情を育んていこうとする様を感動的に映し出した珠玉のファンタジーは、公開から15年以上経った今も観客を惹きつけてやまない。
落下の王国 4Kデジタルリマスター
The Fall
■監督・製作 ターセム
■製作協力 デヴィッド・フィンチャー/スパイク・ジョーンズ
■プロデューサー ニコ・ソウルタナキス
■脚本 ダン・ギルロイ/ニコ・ソウルタナキス/ターセム
■撮影 コリン・ワトキンソン
■衣装 石岡瑛子
■音楽 クリシュナ・レヴィ
■出演 リー・ペイス/カティンカ・アンタルー/ジャスティン・ワデル/ダニエル・カルタジローン/エミール・ホスティナ/ロビン・スミス/ジートゥー・ヴァーマ/レオ・ビル/ジュリアン・ブリーチ/マーカス・ウェズリー
■第31回トロント国際映画祭オフィシャル・セレクション/第40回シッチェス・カタロニア国際映画祭グランプリ受賞/第57回ベルリン国際映画祭クリスタルベアー特別賞
©2006 Googly Films, LLC. All Rights Reserved.
【2026/8/22(土)~8/28(金)上映】
君にささげる、世界にたったひとつの作り話。
時は1915年。映画の撮影中、橋から落ちて大怪我を負い、病室のベッドに横たわるスタントマンのロイは、自暴自棄になっていた。そこに現れたのは、木から落ちて腕を骨折し、入院中の5才の少女・アレクサンドリア。ロイは動けない自分に代わって、自殺するための薬を薬剤室から盗んで来させようと、思いつきの冒険物語を聞かせ始める。それは、愛する者や誇りを失い、深い闇に落ちていた6人の勇者たちが、力を合わせて悪に立ち向かう【愛と復讐の叙事詩】―。
撮影期間4年、13の世界遺産、24カ国以上のロケーション 万華鏡を覗くような《映像美》、魂に響く《物語》の力
2008年の日本公開以来、配信されることなく“幻”とされ続けてきたカルト的ファンタジー『落下の王国』。『ザ・セル』で鮮烈なビジュアル世界を築き、世界に衝撃を与えた“映像の魔術師”ターセム監督が、構想26年、撮影期間4年の歳月をかけて完成させた一級美術品が、ついに圧巻の4Kデジタルリマスターで蘇る。この度、オリジナルの劇場公開版でカットされたシーンが新たに追加され、より濃密な没入体験を実現。CGに頼らず、13の世界遺産、24ヵ国以上のロケーションを巡って撮影された息を吞む“本物”の映像が描き出す、まるで万華鏡を覗くような世界観は、観る者の心を奪い、深く焼きつける。
アメリカが誇る二大巨匠デヴィッド・フィンチャー、スパイク・ジョーンズが、盟友ターセムが私財を投入して挑んだ壮大な自主製作映画の渾身の一作である本作の製作を強力サポート。フランシス・F・コッポラ監督作『ドラキュラ』でアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞し、チャン・イーモウ演出の2008年北京オリンピック開会式のコスチュームも担当した、日本が誇る世界的クリエーター、故・石岡瑛子が衣装を手掛け、煌びやかにして未知なる視覚領域を拡張した、独自の美術世界を創出。世界中のアートやファッション、音楽、建築、民族文化のエッセンスを横断しながら、今日もカルチャーとしての価値を放ち続けるタイムレスな傑作が再びスクリーンに降り立つ。






















