アジア映画を世界に発信した トニー・レインズの功績を讃えて

8/8(土)・10(月)・12(水)・14(金)
エドワード・ヤンの恋愛時代10:4015:10
欲望の翼13:1017:40
~19:20
【レイトショー】ブンミおじさんの森19:40
~21:35
8/9(日)・11(火)・13(木)
ペパーミント・キャンディー10:3015:05
一瞬の夢13:0017:35
~19:25
【レイトショー】ブンミおじさんの森19:40
~21:35

▼チケット販売時刻▼

【8/8(土)・10(月)・12(水)・14(金)】
・10:40『エドワード・ヤンの恋愛時代』からの二本立て ▶ 10:00
・それ以降の回/ラスト1本 ▶ 各回その直前の回が始まって10分後
・レイトショー『ブンミおじさんの森』▶ 10:00

【8/9(日)・11(火)・13(木)】
・10:30『ペパーミント・キャンディー』からの二本立て ▶ 9:50
・それ以降の回/ラスト1本 ▶ 各回その直前の回が始まって10分後
・レイトショー『ブンミおじさんの森』 ▶ 9:50

★指定席でご案内しております。チケットの販売は窓口のみとなります。ご来場の際はお時間に余裕を持ってお越しください。
★そのほか、ご入場システムに関する詳細は、「劇場案内」ページをお読みください。

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トニー・レインズ Tony Rayns
(1948 – 2026)

英国ロンドン生まれの映画評論家、映画祭プログラマー、映画製作者。

中国、日本、韓国など東アジア映画研究の第一人者として知られる。アジアのインディペンデント映画を海外へと紹介し、英語字幕の翻訳者としても活動。バンクーバー国際映画祭やロンドン映画祭のプログラミングをはじめ、釜山国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭にも携わった。また、英国の「サイト・アンド・サウンド」、フランスの「カイエ・デュ・シネマ」をはじめ、複数の映像関連雑誌に長年に渡って評論を寄稿。「New Chinese Cinema」「The Jang Sun-Woo Variations」などドキュメンタリーも制作した。日本映画への貢献が評価され、2004年には川喜多賞を受賞している。

レインズ氏が世界に紹介したアジアの作家たちは、今回上映するウォン・カーウァイ、エドワード・ヤン、イ・チャンドン、ジャ・ジャンクー、アピチャッポン・ウィーラセタクンをはじめ、チェン・カイコー、ホウ・シャオシェン、北野武、三池崇史、ポン・ジュノ、ホン・サンスなど挙げれば限りが無い。自身の全長編作品の英語字幕をレインズ氏が手掛けたジャ・ジャンクーや、デビュー時から長年交流があるアピチャッポン・ウィーラセタクンはレインズ氏の訃報に追悼文を寄せている。

写真協力:公益財団法人川喜多記念映画文化財団

ミ・ナミ

まもなく訪れる、毎年恒例映画祭シーズン。9月のヴェネツィア国際映画祭には、今年もヨーロッパのみならず様々なアジアからの映画が集結しています。しかしこうして当たり前のようにアジア映画が評価される時代には、映画の歴史としては大先輩である欧米各国の作品の中に隠れていた、宝石のようにきらめくアジア映画たちを見逃さなかった先人がいます。

今週の早稲田松竹は、そうした方々の一人であり、惜しくも先月亡くなった映画批評家トニー・レインズ氏の功績を振り返ります。彼が世界へと背中を押したアジアの名監督たちの名作から選りすぐった5作品―『エドワード・ヤンの恋愛時代』『欲望の翼』『ペパーミント・キャンディー』『一瞬の夢』『ブンミおじさんの森』の上映です。

トニー氏の突然の死の後、『一瞬の夢』のジャ・ジャンクー監督は「トニー、あなたが旅立つ前に『ありがとう』と言う時間も、『ごめんなさい』と言う時間もありませんでした。28年間、私たちはいつもあなたに助けを求めていました」(*1)とSNSへポストしました。なぜトニー・レインズ氏がこうもシネアストたちの信頼と愛情を得たのかは、彼が愛した映画が証明しています。アジア映画の世界への軌跡となった作品を堪能しつつ、私もその冴えわたった在りし日の筆致を偲びたいと思います。

エドワード・ヤンの恋愛時代 4Kレストア版
A Confucian Confusion

開映時間 【8/8(土)・10(月)・12(水)・14(金)】10:40/15:10
エドワード・ヤン監督作品/1994年/台湾/129分/4KDCP/ビスタ

■監督・脚本 エドワード・ヤン
■製作 ユー・ウェイエン
■撮影 アーサー・ウォン/リー・ロンユー/ホン・ウーショウ
■美術 ツァイ・チン/エドワード・ヤン
■音楽 アントニオ・リー

■出演 ニー・シューチュン/チェン・シァンチー/ワン・ウェイミン/ワン・ポーセン
 
■1994年カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品/台湾金馬奨脚本賞・助演男優賞・助演女優賞受賞/2022年ヴェネチア国際映画祭クラシック部門正式出品

■オフィシャルサイト
https://www.bitters.co.jp/edwardyang2023/

■物販情報
・パンフレット販売なし

© Kailidoscope Pictures

私たちの求めるものはどこにあるの?

急速な西洋化と経済発展を遂げる1990年代前半の台北。モーリーが経営する会社の状況は良くなく、彼女と婚約者アキンとの仲もうまくいっていない。親友チチは、モーリーの会社で働いているが、モーリーの仕事ぶりに振り回され、恋人ミンとの関係も雲行きが怪しい。彼女たち二人を主軸としつつ、同級生・恋人・姉妹・同僚など10人の男女の人間関係を二日半という凝縮された時間のなかで描く。

都市に生きる男女の姿を二日半の時間で描き切り、時代を先取りした青春群像劇

ハリウッド・リポーターが『ヤンヤン 夏の想い出』を21世紀の映画ベストワンに選出し、現在第一線で活躍する映画作家たちが口々にその影響力の大きさを語るなど、没後15年以上経っても、その存在感が増し続けるエドワード・ヤン。映画史上に屹立する『牯嶺街少年殺人事件』(1991)の直後1994年に、前作と全く異なるアプローチで現代の台北で生きている男女を描き、エドワード・ヤンのフィルモグラフィの中でも最大の野心作『エドワード・ヤンの恋愛時代』。2022年のヴェネチア国際映画祭で4K版がワールドプレミアされるやいなや、トロント、NY、東京と世界中の映画祭が相次いで上映し、「90年代の台北で描かれるすべてのことは、21世紀の大都市でも起こることだ」(Time Out)と絶賛された。

急速な成長を遂げている大都市で生きることで、目的を見失っていた登場人物たちが、自らの求めるものを探してもがき、そして見つけ出していく様を描いている本作。彼らの姿は、情報の海の中で自らの求めるものを見失いがちな、現代に生きる人々の姿と見事に重なり、初公開当時に正当な評価を受けたとは言い難い『エドワード・ヤンの恋愛時代』が、いかに時代を先取りしていたのかが明らかになっている。

エドワード・ヤン監督の代表作『牯嶺街少年殺人事件』についてトニー氏は「ヤン監督の映画の驚くべき点は、登場人物全員を通して、人物描写の幅広さと社会的な色彩を一貫して維持していることだ。どんなに脇役であっても、登場人物としての自律性を否定されたり、粗雑なステレオタイプに押し込められたりすることはない」とし、「ヤン監督の登場人物に対する敬意と愛情だけでなく、冷静で抑制された映像スタイル」と綴っています(*2)。

現代台湾を生きる二人の女性を主筋にしながら彼女たちを取り巻く10人の男女の人間関係を二日半という時間軸で描いた『エドワード・ヤンの恋愛時代』においても、それは同じことが言えるのかもしれません。幾重ものレイヤーを持つキャラクターたちは、行動の善悪も是非も簡単にジャッジできない者たちばかりです。どれほど進化を遂げようと結局は説明のつかないことばかりである人間の感情をスクリーンに鮮明に焼きつけたエドワード・ヤンの躍進にトニー氏が果たした役割は計り知れません。(ミ・ナミ)

欲望の翼 4Kレストア版
Days of Being Wild

開映時間 【8/8(土)・10(月)・12(水)・14(金)】13:10/17:40(~終映19:20)
ウォン・カーウァイ監督作品/1990年/香港/95分/4KDCP/ヨーロピアンビスタ

■監督・脚本 ウォン・カーウァイ 
■撮影 クリストファー・ドイル
■美術 ウィリアム・チョン
■編集 パトリック・タム

■出演 レスリー・チャン/マギー・チャン/カリーナ・ラウ/トニー・レオン/アンディ・ラウ/レベッカ・パン

■1991年香港電影金像奨作品賞・監督賞・主演男優賞・撮影賞・美術賞受賞/アジア太平洋映画祭審査員グランプリ・監督賞・助演女優賞・撮影賞受賞/台湾金馬奨監督賞・助演女優賞・編集賞・他3部門受賞/仏ナント国際映画祭主演女優賞受賞

■オフィシャルサイト
https://hark3.com/wkwtb/#

■パンフレット販売未定

© 1990 East Asia Films Distribution Limited and eSun.com Limited. All Rights Reserved.

閃光のごとき衝撃と陶酔――ウォン・カーウァイ監督初期の傑作

裕福な養母に育てられるが、産みの親が分からないまま心に空白を抱えて生きる男、ヨディ。彼はサッカースタジアムで働くスーと恋仲になるが、堅実な関係を望む彼女の気持ちに応えられない。そのため彼女を失ったヨディは、間もなく踊り子のミミと付き合いはじめる。一方、別れたもののヨディを思い切れず、夜ごと彼の家に向かってしまうスー。彼女は夜間巡回中の警官タイドに話を聞いてもらうことで、自らの心を慰めていた。やがて、実の母親がフィリピンにいると知ったヨディはひとりで香港を出るが…。

1960年香港、都市に生き、自由を求める若者たちの孤独と恋愛模様を描いた群像劇。のちに何度もタッグを組むクリストファー・ドイルをはじめて撮影監督に迎え、説明や構成よりもムードや気配を際立たせる詩的なスタイルを確立した第二作。プイグや村上春樹など文学作品からの影響、ラテン音楽の起用、レスリー・チャンら大スター6人の豪華競演──すべての要素が奇跡的なバランスで絡み合う『欲望の翼』は、とびきりメロウでメランコリックな、WKW映画のひとつの特異点と言える。1991年香港電影金像奨5部門(作品賞、監督賞、最優秀男優賞、美術賞、撮影賞)受賞。

「何年も前の釜山でのある晩、酔いつぶれてしまい別れを互いに言えなかった」(*3)とトニー氏への哀悼をつづったウォン・カーウァイ監督。その中のこんな一文-「映画の世界における自由な精神として、彼は映画祭を導き、観客を導き、容易に失われかねないものを守りました:ニュアンス、機知、言葉の間の沈黙。彼は異国的なものを親しみやすくしたものの、その魂を決して奪うことはありませんでした」が印象的です。その批評眼は温かくも鋭敏であると同時に、オリエンタリズムで以てほめそやすだけのものではありませんでした。

『欲望の翼』には4人の香港の若者が登場しますが、細やかさに物語の舞台となる香港、フィリピンに漂うアジア特有の熱気だけでない、彼ら彼女らが抱えた孤独と倦怠がたしかにここにあります。見抜いたイギリス人批評家に、若き香港の映画作家だったウォン・カーワイもまた驚嘆したのかもしれません。(ミ・ナミ)

ペパーミント・キャンディー 4Kレストア・デジタルリマスター版
Peppermint Candy

開映時間 【8/9(日)・11(火)・13(木)】10:30/15:05
イ・チャンドン監督作品/1999年/韓国・日本/130分/4KDCP/R15+/ビスタ

■監督・原作・脚本 イ・チャンドン
■製作 ミヨン・ケナム/上田信
■撮影 キム・ヒョング
■編集 キム・ヒョン
■音楽 イ・ジェジン

■出演 ソル・ギョング/ムン・ソリ/キム・ヨジン

■第53回カンヌ国際映画祭監督週間出品/第37回大鐘賞最優秀作品賞ほか主要5部門受賞/第21回青龍映画賞主演男優賞・脚本賞受賞 ほか多数受賞

■パンフレット販売なし

もう戻れない、失われてしまった時

1999年、春。旧友たちとのピクニックに場違いな恰好で現れたキム・ヨンホ。そこは、20年前に初恋の人スニムと訪れた場所だった。仕事も家族もすべてを失い、絶望の淵に立たされたヨンホは、線路の上で向かってくる列車に向かって「帰りたい!」と叫ぶ。すると、彼の人生が巻き戻されていく。自ら崩壊させてしまった妻ホンジャとの生活、互いに惹かれ合いながらも結ばれなかったスニムへの愛、兵士として遭遇した「光州事件」…。そして、記憶の旅は人生のもっとも美しく純粋だった20年前にたどり着く…。

激動の韓国現代史を背景に、20年の記憶をたどる時間旅行

小説家を経て脚本家として映画界に入り、96年『グリーン・フィッシュ』で監督デビューしたイ・チャンドン。第二作目の『ペパーミント・キャンディー』では、人生への深い洞察と、真実味のあるストーリー、郷愁を誘う映像美で、アジアを代表する新しい映画作家として世界に強い衝撃を与えた。主演は、いまや韓国を代表する名優であるソル・ギョング。20年におよぶ男の人生を全身全霊で挑み、圧倒的な演技力を見せつけた。

韓国のアカデミー賞といわれる2000年の大鐘賞で主要5部門受賞、各国の映画祭でも絶賛を浴びた『ペパーミント・キャンディー』。なお、本作は日本のNHKと韓国の共同制作で、韓国の日本文化開放後、両国が最初に取り組んだ記念すべき作品でもある。

トニー氏がすぐれていたのは、それぞれの映画にある痛みの記憶、苦難の道のり(それが個人物語から出来ているか否かにかかわらず)に根差した批評を遺しているからではないでしょうか。イ・チャンドン監督もまた、『ペパーミント・キャンディー』でトニー氏の賞賛を受けました。

主人公の中年男性・ヨンホの人生をさかのぼるストーリーテリングである本作についてトニー氏は「ヨンホの道徳的・精神的な荒廃の責任の大部分が彼自身にあることを明確にしつつも、1980年の光州事件当時の軍務というトラウマ的な出来事をその引き金として特定し、国家の権威主義や腐敗といった風土にも有害な役割を負わせている」(*4)と家庭、仕事、人生のすべてを自ら壊してしまったヨンホの悲劇は韓国現代史の深い痛ましさとして見抜いています。

本作が傑作として今なお朽ちないのは「韓国が民主化へと突き進む過程で犯した数々の過ちに対する痛烈な告発の書」でありながら、「一人の男に焦点を当てることで、人間味あふれるドラマとしての核心が形作られている」からだと核心を突きました。(ミ・ナミ)

一瞬の夢
Pickpocket

開映時間 【8/9(日)・11(火)・13(木)】13:00/17:35(~終映19:25)
ジャ・ジャンクー監督作品/1997年/中国・香港/108分/35mm/スタンダード/MONO

■監督・製作・脚本 ジャ・ジャンクー
■撮影 ユー・リクウァイ

■出演 ワン・ホンウェイ/ハオ・ホンジャン/ズオ・バイタオ/マー・ジンレイ

■1998年ベルリン国際映画祭最優秀新人監督賞・最優秀アジア映画賞受賞/プサン国際映画祭グランプリ受賞/ナント三大陸映画祭グランプリ受賞ほか

■オフィシャルサイト
http://www.bitters.co.jp/filmbook/xiao/xiao_top.html

■物販情報
・パンフレット販売なし

©Hu Tong Communication

スリに生きる青年が、ある日、心を盗まれた。ジャ・ジャンクー27歳、驚愕のデビュー作!

スリで日銭を稼ぎ、所在なく日々を送る小武(シャオウー)。かつての仲間は更生し、もう彼を相手にさえしない。しかし、現実を受け入れられず、目標も定まらず、小武はスリを繰り返す。ある日、カラオケ・バーに行った彼は、メイメイという女性と出会う。静かに横で歌うメイメイの姿に心が騒ぐ小武。その時から、彼の中に人を愛する感情が芽生え始める…。

27歳にして長編デビューを果した賈樟柯(ジャ・ジャンクー)。『一瞬の夢』は、アンチ・ヒーローの物語を借りながら、経済発展の裏で失業者や犯罪者が増加している中国の厳しい現実の姿を背景に流し込み、そこに息づく人間の感情の機微が鮮烈に描かれている。舞台となった小さな地方都市、山西省・汾陽(フェンヤン)は監督の出身地でもある。

香港資本で製作し、そのため製作上の中国本土の検閲を逃れることができたという本作。ベルリン国際映画祭にて最優秀新人賞、最優秀アジア映画賞、ナント三大陸映画祭ではグランプリを受賞した。

ジャ・ジャンクー監督が自身のふるさとである汾陽を舞台にした『一瞬の夢』を、彼について「1990年代末に自主制作映画が急増したとすれば、それはほぼ100%ジャ・ジャンクー監督のおかげと言える」(*5)とその功績に太鼓判を押すトニー氏は本作を「彼の敗者の鎧を何層にも剥ぎ取り、人間としてあり得る限り『裸』の状態にする」と評しました(*6)。

何者になることも叶わないコソ泥の不良青年シャオウーの苦い青春と恋を描く本作が、ジャ・ジャンクー本人の個人的記憶も観客に想起させると同時に、観る者一人一人の記憶にも接続できるのは、トニー氏の指摘したような人間としての“裸”の瞬間が映しとられているからかもしれません。(ミ・ナミ)

【レイトショー】ブンミおじさんの森
【Late Show】Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives

開映時間 【8/8(土)~14(金)】19:40(~終映21:35)
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督作品/2010年/イギリス・タイ・ドイツ・フランス・スペイン/114分/35mm/ビスタ/SRD

■監督・製作・脚本 アピチャッポン・ウィーラセタクン
■撮影 サヨムプー・ムックディプローム/ユッコントン・ミンモンコン/チャリン・ペンパーニット
■編集 リー・チャータメーティクン
■音響 清水宏一

■出演 タナパット・サーイセイマー/ジェーンジラー・ポンパット /サクダー・ケーオブアディ/ナッタカーン・アパイウォン/チィラサック・クンホン

■2010年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞/シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭批評家賞受賞/カイエ・デュ・シネマ2010ベスト1

■オフィシャルサイト 
http://www.moviola.jp/boonmee/top.php

■パンフレット販売なし

©Kick the Machine Films


★本作品はレイトショー上映です。
☟入場料金
一律1200円(割引なし)
★チケットは、朝の開場時刻より受付にて販売いたします(当日券のみ)。

いくつもの時を生き 穏やかに 目を閉じる。いつかどこかで また会える。

腎臓の病に冒され、死を間近にしたブンミは、妻の妹ジェンと、ジェンの息子トンをタイ東北部にある自分の農園に呼び寄せる。そこに19年前に亡くなった妻が現れ、数年前に行方不明になった息子も姿を変えて現れる。やがてブンミは愛するものたちとともに森に入っていく…。

美しく斬新なイマジネーション、思わず笑みがこぼれるユーモア。 何より生と死に対する優しく深い洞察が、世界に驚きを与えた傑作!

2010年カンヌ国際映画祭にてタイ映画として初のパルムドールを受賞した本作。審査委員長を務めたティム・バートンは受賞の理由をこう語る。「世界はより小さく、より西洋的に、ハリウッド的になっている。でもこの映画には、私が見たこともないファンタジーがあった。それは美しく、まるで不思議な夢を見ているようだった。僕たちはいつも映画にサプライズを求めている。この映画は、まさにそのサプライズをもたらした」。

ブンミと一緒に森を歩き、洞窟の中に入っていく私たちの耳に聞こえてくる静かな声が聞こえてくるとき、 心は不思議に懐かしい感情で満たされる。私たちのからだの中にある東洋の遺伝子が、ブンミを通して魂が繰り返し生きて行くことを思い出させてくれるのかもしれない。

この映画には、近代が失ってしまった闇があり、見えざるものがあり、穏やかな死がある。だからこそ光は美しく、世界は驚きに満ち、生は目映い。『ブンミおじさんの森』は、かつてそうであったものを、未来に伝える幸福な映画なのである。

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督もまた、自身のふるさとであるタイ北部を中心に、土地にまつわる伝承や歴史から映画を作り上げる映画人です。腎臓がんで死に近づきつつあるブンミを主人公とした『ブンミおじさんの森』は、アピチャッポン監督特有の夢と現(うつつ)と彼岸がシームレスに往還しながら、1973年に起きた学生民主化運動の痛ましい歴史にも触れます。

トニー氏はアピチャッポンが自分の作品を「対象としていること」がなく、観客たちに伝えるべき「メッセージ」や熱く語りかけるようなものがないことは明らかである、と話したというインタビューを引きながら、「私はどこかで彼の映画を“言葉では表現しがたい思考や感情を伝える機械仕掛け”」(*7)と表現しています。

鬱蒼とした自然の中にいる水牛や猿、魚という人ならざる存在とスクリーンを介して邂逅していると、何だか観ているこちらも映画の中へ誘われ渾然一体となるように心地よくなります。この感動はただ神秘的というだけではない、誰もが夜眠りの中で見る夢という現象を、スクリーンを介して本当に見せてくれるからなのではないでしょうか。(ミ・ナミ)

参考URL

(*1)「贾樟柯发文悼念Tony Rayns:来不及说“抱歉”你就走了」

(*2)「Lonesome tonight: Tony Rayns and Edward Yang on A Brighter Summer Day」

(*3)Sight and Sound magazine@SightSoundmagのXポスト

(*4)NZ FILM SOCIETY

(*5)A brief history of Chinese independent film with Tony Rayns

(*6)Sense of Cinema

(*7)トニー・レインズ『虚無との接触』(「アピチャッポン・ウィーラセタクン:光と記憶のアーティスト」2016年 フィルムアート社)

※本レビューの引用箇所は一部に自動翻訳を使用し掲載しております