『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』『メガロポリス』// 特別モーニング&レイトショー『ゴダールのリア王』

ウェス・アンダーソン×コッポラ×ゴダール 創造と失敗のあいだに

フランシス・フォード・コッポラ、ウェス・アンダーソン、ジャン=リュック・ゴダール。今週の早稲田松竹は、誰ひとりとして模倣することのできない、唯一無二の作家たちが顔を揃える特集上映である。

二本立ての『メガロポリス』『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』では、“アメリカ共和国・大都市ニューローマ”と“大独立国フェニキア”という、名を聞くだけでワクワクしてしまうような架空の国が舞台となっている。ニューローマでは、アダム・ドライバー演じる天才建築家カエサルが新都市メガロポリスの開発という壮大な夢に挑み、一方フェニキアでは、ベニチオ・デル・トロ演じる大富豪ザ・ザ・コルダが、国家全土を巻き込む巨大プロジェクトを計画する。いずれも、個人の理想と国家の未来が交錯する、途方もないスケールの物語だ。

コッポラが一億ドルという巨額な私財を投じて築き上げた絢爛豪華なセレブリティの世界、そして誰も見たことのない未来都市メガロポリスの幻想的なビジョンは、映画史に刻まれるであろう圧倒的な映像体験をもたらす。一方、ザ・ザ・コルダ邸を彩る美術品の数々が実在のコレクションや美術館から提供された“本物”であるという事実も驚きだ。ロザリオやパイプ、リュックサックといった小道具に至るまで高級メゾンが制作を手がけ、フレームの隅々まで徹底的に設計された画面は、瞬きすら惜しくなるほどの緻密さに満ちている。

さらに、『ゴダールのリア王』。ウィリアム・シェイクスピアの戯曲「リア王」を、ゴダールが大胆に再解釈した現代アメリカ映画である。ゴダール本人やレオス・カラックスをはじめ、作中に姿を見せる名だたる映画人たちにもぜひ注目したい。映画とは何かを問い直す、挑発的で詩的な一本だ。

世界の頂点に立つカリスマたちは、圧倒的なセンスと富、名誉を備えた、どこか近寄りがたい存在に見える。しかしカエサルやザ・ザ・コルダのように、その輝かしい成功の裏で、あまたの葛藤や問題に直面している。彼らもまた、不完全で揺らぐ一人の人間なのだ。
世界を覆すような壮大な計画を成し遂げようとする者の苦労は計り知れない。そしてそれはきっと、コッポラ、ウェス・アンダーソン、ゴダールという映画界の巨匠たちにも通じている。人知れぬ努力、幾度もの失敗、そして揺るぎない信念。その積み重ねの先にこそ、偉大な作品は生まれるのだろう。

唯一無二の才能が交差するこの上映は、単なる鑑賞を超え、創造という営みの核心に触れる時間となるはずだ。

メガロポリス
Megalopolis

フランシス・フォード・コッポラ監督作品/2024年/アメリカ/138分/DCP/PG12/シネスコ

■製作・監督・脚本 フランシス・フォード・コッポラ
■協力・セカンドユニット監督 ロマン・コッポラ
■撮影監督 ミハイ・マライメア・Jr.
■編集 キャム・マクラクリン/グレン・スキャントルベリー
■衣装 ミレーナ・カノネロ
■作曲 オスバルド・ゴリホフ

■出演 アダム・ドライバー/ジャンカルロ・エスポジート/ナタリー・エマニュエル/オーブリー・プラザ/シャイア・ラブーフ/ジョン・ヴォイト/ローレンス・フィッシュバーン/タリア・シャイア/ジェイソン・シュワルツマン/キャスリン・ハンター/グレース・ヴァンダーウォール/クロエ・ファインマン

© 2024 Caesar Film LLC All Rights Reserved.

【2026/2/14~2/20上映】

理想都市メガロポリス それは天才建築家が挑む人類の未来への希望

21世紀、アメリカ共和国の大都市ニューローマでは、享楽にふける富裕層と苦しい生活を強いられる貧困層の格差が社会問題化していた。市の都市計画局局長を務め、名門クラッスス一族の一員でもある天才建築家カエサル・カティリナは、新都市メガロポリスの開発を推進する。それは、人々が平等で幸せに暮らせる理想郷(ユートピア)だった。だが、財政難の中で利権に固執する市長のフランクリン・キケロは、カジノ建設を計画し、カエサルと真正面から対立する。また一族の後継を目論むクローディオ・プルケルの策謀にも巻き込まれ、カエサルは絶体絶命の危機に直面するが─。

構想40年、巨匠コッポラが人生をかけた一大叙事詩

数々の傑作を生みだしてきた巨匠コッポラが、幾度となる困難を乗り越えついに完成させた最新作『メガロポリス』。2024年カンヌ国際映画祭で初披露され、鳴り止まぬスタンディングオベーションと共に話題騒然となった。崩壊の危機に直面する近未来アメリカをローマ帝国に見立てた空前絶後のストーリー、壮麗で圧倒的な映像美、そして新旧俳優陣による見事なアンサンブル。その物語はまるで“今日”を予言していたかの如く現代社会の問題を真正面から捉えると同時に、根底に流れるのは絶望ではなく “人類”を信じるコッポラの未来への希望だ。映画史に名を残すことが運命づけられたコッポラの集大成『メガロポリス』が、ついにその全貌を現す。

ザ・ザ・コルダのフェニキア計画
The Phoenician Scheme

ウェス・アンダーソン監督作品/2025年/アメリカ・ドイツ/102分/DCP/スタンダード

■脚本・監督 ウェス・アンダーソン
■原案 ウェス・アンダーソン/ロマン・コッポラ
■製作 ウェス・アンダーソン/スティーブン・レイルズ/ジェレミー・ドーソン/ジョン・ピート 
■製作総指揮 ヘニング・モルフェンター
■撮影 ブリュノ・デルボネル
■編集 バーニー・ピリング
■衣装 ミレーナ・カノネロ
■音楽 アレクサンドル・デスプラ

■出演 ベニチオ・デル・トロ/ミア・スレアプレトン/マイケル・セラ/リズ・アーメッド/トム・ハンクス/ブライアン・クランストン/マチュー・アマルリック/リチャード・アイオアディ/ジェフリー・ライト/スカーレット・ヨハンソン/ベネディクト・カンバーバッチ/ルパート・フレンド/ホープ・デイビス

■第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品

© 2025 TPS Productions LLC & Focus Features LLC. All Rights Reserved.

【2026/2/14~2/20上映】

資金と父娘の“ギャップ”、ただいま修復中。

舞台は1950年代、“現代の大独立国フェニキア”。6度の暗殺未遂から生き延びた大富豪ザ・ザ・コルダは、フェニキア全域に及ぶ陸海三つのインフラを整備する大規模プロジェクト「フェニキア計画」の実現を目指していた。そんな中、とある妨害によって赤字が拡大、財政難に陥り、計画が脅かされることに。ザ・ザは離れて暮らす修道女見習いの一人娘リーズルを後継者に指名し、彼女を連れて旅に出る。目的は資金調達と計画推進、そしてリーズルの母の死の真相を追うこと。果たして、プロジェクトは成功するのか?リーズルの母を殺したのは誰か?そして、父と娘は「本当の家族」になれるのか──? 

家族の絆と再生を描くクライム・ファミリー・コメディ誕生!

『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』、『ダージリン急行』を彷彿とさせる家族の絆と再生を描き、「原点回帰した」と世界のメディアや映画ファンも大歓喜のウェス・アンダーソン監督最新作!

大富豪ザ・ザ・コルダを演じるのは、アカデミー賞俳優ベニチオ・デル・トロ。「フェニキア計画」への出資者の一人、鉄道王リーランドにトム・ハンクス、ザ・ザの“はとこ”ヒルダには、スカーレット・ヨハンソン、そしてザ・ザの異母兄弟ヌバルには、ベネディクト・カンバーバッチ。いつもは主役を張る豪華スターたちが、くせ者キャラクターたちを快&怪演。ザ・ザの娘リーズルには、何百人もの中からオーディションで選ばれたミア・スレアプレトン。彼女とザ・ザの旅に同行する家庭教師のビョルンには、マイケル・セラ。また、ウェス作品には欠かせないマチュー・アマルリックやジェフリー・ライト、ウィレム・デフォー、そしてビル・マーレイも出演、物語にユーモアと奥深さを与えている。

ザ・ザの邸宅を飾る美術品は、ルノワールはナーマド・コレクション、マグリットはピーチ・コレクション、その他の作品はハンブルク美術館から提供を受けており、“本物”へのこだわりを見せている。

【モーニング&レイトショー】ゴダールのリア王
【Morning&Late Show】King Lear

ジャン=リュック・ゴダール監督作品/1987年/アメリカ・バハマ・フランス・スイス/91分/Blu-ray/スタンダード

■監督 ジャン=リュック・ゴダール
■脚本 ノーマン・メイラー
■撮影 カロリーヌ・シャンプティエ/ソフィー・マンティニュー

■出演 ピーター・セラーズ/バージェス・メレディス/モリ―・リングウォルド/ジャン=リュック・ゴダール/レオス・カラックス/ジュリー・デルピー/ウディ・アレン

©Images courtesy of Park Circus/Amazon MGM

【2026/2/14~2/20上映】

ゴダールが文豪シェイクスピアに挑む!

チェルノブイリの大惨事によって芸術作品のほとんどが失われた時代。ウィリアム・シェイクスピア五世は、スイスのニヨンにあるホテルで食事をとっていた。彼の近くでは、マフィアのボスであるドン・レアーロが3人の娘に財産を分け与える旨の話をしている。その話に聞き入っていたウィリアムは、彼らが権力と美徳を競ったリア王とコーデリアであることに気づき、そこから祖先が生み出した名篇『リア王』を独自に創作することを思いつく。

イマージュは、魂の純粋な創造物である

巨匠ジャン=リュック・ゴダールが、シェイクスピア悲劇の最高傑作と名高い戯曲「リア王」を自由に再解釈した初のアメリカ映画。製作は『暴走機関車』『デルタフォース』など主に80年代に娯楽大作を連発したキャノン・フィルム。プロデューサーはメナハム・ゴーランが務めた。自称シェイクスピアの子孫「シェイクスピア五世」を名乗る青年劇作家が、先祖の偉業を現代に置き換え新たな物語を生み出すために奮闘する姿を、イメージと言葉を奔放かつ巧みにコラージュして創り上げたゴダール作品の中でも一際異彩を放つ一作。キャストも監督のゴダールを筆頭に『ポンヌフの恋人』などで知られる鬼才レオス・カラックス、「ビフォア三部作」のジュリー・デルピー、『ブレックファスト・クラブ』のモリー・リングウォルド、『ミッドナイト・イン・パリ』のウディ・アレンなど国際色豊かなキャストが続々と出演。