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「アメリカインディペンデント映画の父」と呼ばれ、俳優として多くの作品に出演する傍らハリウッドの映画づくりに反旗を翻し、自らが理想とする映画を追求しつづけたジョン・カサヴェテス。
今回上映する『フェイシズ』『ハズバンズ』『ミニー&モスコウィッツ』は、1968年から1971年にかけて同時期に制作された作品群であり、いずれも「結婚」がテーマだ。即興的で自由な作風を追求してきた彼が、「結婚」という社会的・法的に縛られる「愛のかたち」について、3作とも異なる視点で描いている。
14年間の結婚生活が突然崩壊する様を描いた『フェイシズ』。友人の死によって人生を見つめ直す3人の中年男性を描いた『ハズバンズ』。2人の男女がわずか4日間で結婚するまでを描いた『ミニー&モスコウィッツ』。
どれも結婚制度に疑問を持ち続けたカサヴェテス自身のありのままの感情がぶつけられる。それゆえに、カサヴェテスの作品は観終わるとどっと疲れる。全然ドラマチックでもなければ、不快に思うこともそれなりにある。でも、人生って、人間って、こうだよなあ。どうしようもなくて、全然きれいじゃない。
それでも彼の映画がこんなにも面白おかしく思えるのは、きっと人生のくだらなさも愛おしさも表裏一体であることを私たちはどこかで知っているからではないだろうか。人生とは、結婚とは、愛とは…。答えのない永遠の問いに、カサヴェテスは映画という愛をもって教えてくれる。
フェイシズ
Faces
■監督・脚本 ジョン・カサヴェテス
■製作・編集 モーリス・マッケンドリー
■撮影・編集 アル・ルーバン
■音楽 ジャック・アッカーマン
■出演 ジョン・マーレイ/ジーナ・ローランズ/シーモア・カッセル/リン・カーリン
■第41回アカデミー賞3部門ノミネート/第29回ヴェネツィア国際映画祭男優賞受賞
©1968 JOHN CASSAVETES
【2025/12/20~12/26上映】
一見平和に見える夫婦に訪れた突然の破局…
地位も名誉もある実業家リチャードは、高級娼婦ジーニーの家で一夜を過ごす。家に戻ったリチャードは妻マリアとのとりとめもない会話を交わした後、唐突に離婚を切り出し、再びジーニーの元へ行ってしまう。一方、戸惑うマリアは、夜遊びに出かけたディスコで知り合った若者チェットとベッドを共にし、行きずりの夜を過ごす。翌朝、事の重大さに気づいたマリアは自殺を図ろうとするのだが…。
数々の賞に輝き、カサヴェテスの名声を確立した初期の傑作!
14年間の結婚生活が崩壊する36時間を描いた『フェイシズ』は、タイトル通り、感情も露わな人々の顔(フェイシズ)の映画であり、ひたすら空虚な馬鹿笑いや浮かれ騒ぎを繰り広げる姿を、迫真のタッチで生々しく見つめ、またあるアメリカ中流階級に対する考察ともなっている。
監督作品である『愛の奇跡』でのトラブルに嫌気がさしたカサヴェテスは、2年間、家で小説や戯曲を書いて過ごしていた。『フェイシズ』はその2年間に書いた2人の男が古きよき日のことを語り合うダイアローグをふくらませたものである。撮影は彼の家で行われ、編集は3年間、彼のガレージを改造したオフィスで行われた。彼はその間に5本の映画に出演し、稼いだ金のすべてをこの映画に注ぎ込んだ。カサヴェテスはこの映画の撮影時をふりかえり「わが人生の最良の時だ。スタッフ、キャストは気心の知れた仲間だったし、皆映画を理解し、純粋だった」と語っている。
ハズバンズ
Husbands
■監督・脚本 ジョン・カサヴェテス
■製作 アル・ルーバン
■製作補 サム・ショウ
■撮影 ヴィクター・J・ケンパー
■編集監修 ピーター・タナー
■美術監修 レネ・ドリアック
■製作主任 ロバート・グリーンハット
■出演 ベン・ギャザラ/ピーター・フォーク/ジョン・カサヴェテス/ジェニー・リー・ライト/ノエル・カオ/ジェニー・ラナカー/メタ・ショウ
Images courtesy of Park Circus/Sony Pictures
【2025/12/20~12/26上映】
家に帰りたくない男たち。
ハリーは広告マン、アーチーは新聞記者、ガスは歯科医。家庭も子供もいる3人は世間的に見れば、一人前の男たちである。ある時、彼らは幼なじみの死に遭遇する。葬式は質素で慎ましいものであったが、彼らはそれだけでは我慢ができず、夜にはバーへ行き、酒を飲み、大声で歌い、トラブルを起こす。無縁だと思っていた“死”が身近に迫ることで焦燥感に駆られた3人は、家に帰ると目にするいつもと同じ風景に虚しさを感じてしまい、パスポートだけを持ってロンドンへ行くことに…。
ーー『ハズバンズ』では男たちの感情や行動、彼らが人生に屈しないで生きる様子を描いた。…ぼくは観客を一緒に旅に連れて行きたいんだ。ぼくらを悩ませるすべてのしがらみを断ち切り、何のモラルにも縛られることのない旅にね。ーー『ジョン・カサヴェテスは語る』より
ハリーを演じるのは『バッファロー'66』のベン・ギャザラ、アーチ―役はTVシリーズ「刑事コロンボ」でお馴染みのピーター・フォーク、そしてガス役は本作の監督でもあるジョン・カサヴェテス。カサヴェテスはこの2人と仕事をしたいと切望をしており、初めて一堂に会した作品である。信頼関係を築くために1年以上もの歳月をかけ3人で脚本を練り上げて撮影に挑んだ。映画を撮り終える頃にはお互い親友となり、ギャザラとフォークは、カサヴェテス作品の“顔”として出演することとなった。
また、カサヴェテスは編集に苦労し、結局6種類のヴァージョンが出来上がる。最初はピーター・タナ―による編集によるもので、第二版はそれにカサヴェテスが手を加えたもの。しかし満足できず3度、4度と手を加え、コロンビアの圧力があり、さらに手を加えた5番目が153分でサンフランシスコ映画祭で上映された。6番目がやっと一般公開されたヴァージョンとなる。
【レイトショー】ミニー&モスコウィッツ
【Late Show】Minnie and Moskowitz
■監督・脚本 ジョン・カサヴェテス
■製作 アル・ルーバン
■製作補 ポール・ドネリー
■撮影 アーサー・J・オーニッツ/アルリック・エデンズ/マイケル・マーグリーズ
■編集 フレッド・ナトソン
■音楽監修 ボー・ハーウッド
■出演 ジーナ・ローランズ/シーモア・カッセル/ヴァル・エイヴリー/キャサリン・カサヴェテス/エルジー・エイムス/レディ・ローランズ/ジョン・カサヴェテス
Images courtesy of Park Circus/Universal
【2025/12/20~12/26上映】
古くさくって新しい、愛の形ーー
モスコウィッツは一風変わったユダヤ人青年でニューヨークのある駐車場の管理人をしている。なにかと騒ぎを起こすので、人々に煙たがられていた。一方、ミニーは美術館で働く女性で、今までの恋愛はすべて既婚者であった。結婚を考えるようになったミニーは、あるレストランでデートをする。しかし、相手の男にしつこく絡まれていたところをモスコウィッツに助けられ、なんと一目惚れされてしまう…。
アメリカ映画界最高のカップルの恋物語をモデルに描かれる、最高にハッピーな傑作恋愛ドラマ。
何の共通点も持たない男と女が、出逢いからわずか4日間で結婚するまでをユーモアたっぷりに描いた心温まるラヴ・ストーリー。監督はハリウッドのスタジオシステムを強く拒否したアメリカン・インディーズの巨匠、ジョン・カサヴェテス。俳優としても活躍したカサヴェテスは、俳優業の稼ぎのほとんどを自作の映画製作に投入し、完全な自己資金で撮りたい映画を撮り続けた。ウディ・アレンやマーティン・スコセッシ、ジム・ジャームッシュなどのニューヨーク派の先駆者であり、その姿勢から"アメリカ・インディペンデント映画の父"としてヴィム・ヴェンダース、ショーン・ペンほか多くの映画作家たちに影響を与え続けている。
本作は、カサヴェテスの妻ジーナ・ローランズに対する一目惚れの体験や、移民の息子と政治家の娘という立場の違い、結婚式でのエピソードなど、妻への深い求愛の経験をもとに作られた。『ハズバンズ』『フェイシズ』とともにカサヴェテスの結婚3部作とも呼ばれている名作である。
(2000年日本公開時のチラシより一部抜粋)























