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2026年3月、漫画家・つげ義春さんが亡くなられた。ちょうど「旅と日々」を鑑賞した直後の訃報だったので、半ば信じられず、とても物寂しい気持ちになった。
つげ義春の作品といえば、代表作「ねじ式」などに通ずる「旅」をテーマとした作品群が印象的だ。旅といっても、わくわくするようなものではなく、舞台となるのは寂れた漁村や温泉街、安宿などが主で、社会の周縁を生きる人々の孤独や可笑しみが描かれる。
漫画界のみならず、幅広い分野に影響を与えた彼の世界は、映画にも受け継がれてきた。今回上映するつげ義春の原作をもとにした作品たちは、どれも言ってしまえば特別なにかが起こるわけではない。それでも、ぐっと心に残る余韻があるから不思議だ。
「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を元に、三宅唱監督のあたたかな眼差しを通して描かれる『旅と日々』は、2つの物語が交差し、人と人との出会いと別れが美しい風景と共に綴られる。
『リアリズムの宿』では、冴えない男ふたりが訪れた温泉街で起こる些細な出来事の数々に思わずくすりと笑ってしまう。山下敦弘監督ならではのゆるやかな空気が流れるのが心地いい。
多摩川の川原で石を売る男とその家族を描いた『無能の人』は、漫画マニアを自称する竹中直人自らが監督と主演を務め、つげ作品へのオマージュが散りばめられたこだわりの世界を映し出している。
どの作品も異なる角度からつげ義春作品の魅力を捉え、映画としてその姿を変えてもなお、漫画の持つ哲学が生かされている。
幻想と現実が入り混じる独特の空気、名もなき風景やそこで出会うおかしな人々。人や土地の気配が静かに心に残る。つげ義春の描いた孤独や放浪の記憶は、これからも人々にそっと寄り添い続けるのだろう。そんなことを映画を観て思ったのだった。
旅と日々
Two Seasons, Two Strangers
■監督・脚本 三宅唱
■原作 つげ義春「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」
■プロデューサー 城内政芳
■撮影 月永雄太
■編集 大川景子
■音楽 Hi’Spec
■出演 シム・ウンギョン/堤真一/河合優実/髙田万作/佐野史郎/斉藤陽一郎/松浦慎一郎/足立智充/梅舟惟永
© 2025『旅と日々』製作委員会
【6/6(土)~6/12(金)上映】
特別じゃない旅が、ちょっとだけ毎日を変える。
眩しい夏の海。ビーチの似合わない男が、陰のある女に出会う。何を語るでもなく、散策するふたり。翌日、大雨が降りしきる中、ふたりは海で泳ぐのだった…。つげ義春の漫画を原作に映画の脚本を書いた李は「私には才能がない」とうつむく。冬、李はひょんなことから訪れた雪荒ぶ旅先の山奥でおんぼろ宿に迷い込む。雪の重みで今にも落ちそうな屋根。やる気の感じられない宿主、べん造。暖房もない、まともな食事も出ない、布団も自分で敷く始末。ある夜、べん造は李を夜の雪の原へと連れ出すのだった…。
毎日が旅の途中だ
『ケイコ 目を澄ませて』、『夜明けのすべて』などで映画賞を席巻し、現代日本映画界を牽引する三宅唱監督の最新作『旅と日々』。原作は、つげ義春の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」。2020年フランスのアングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞に輝いた稀代の漫画家の、初版から50年以上を経た2作を三宅監督が見事な手腕で現代的にアップデート。そして、ロカルノ国際映画祭にて日本映画では18 年ぶりとなる金豹賞《グランプリ》に加え、ヤング審査員賞特別賞をW受賞。既にUS、フランス、韓国、中国、台湾、香港、インドネシア、ポルトガル、ギリシャでの配給も決定するなど、世界が最も注目している日本映画監督と言っても過言ではない。
主人公・李を演じるのは、『新聞記者』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞し、韓国出身ながら日本映画界に不可欠な俳優シム・ウンギョン。共演に映画、テレビ、舞台と縦横無尽に活躍する堤真一、2024年の映画賞を多々受賞した河合優実、話題作への出演が続く髙田万作、さらに、つげ義春作品に欠かせない俳優・佐野史郎を加え、屈指の実力派俳優陣が集結した。
リアリズムの宿
Ramblers
2003年/日本/83分/35mm
■監督 山下敦弘
■原作 つげ義春「リアリズムの宿」「会津の釣り宿」
■プロデューサー 定井勇二/富岡邦彦/岡本東郎
■脚本 向井康介/山下敦弘
■撮影 近藤龍人
■編集 山下敦弘/定者如文
■音楽 くるり
■テーマ曲 「家出娘」作詞・作曲 岸田繁(くるり)
■出演 長塚圭史/山本浩司/尾野真千子/多賀勝一/ サニー・フランシス/天野公深子/瀬川浩司/川元将平/山本剛史
【6/6(土)~6/12(金)上映】
立ち止まったり、道草したり。それでも明日が見えてくる。
駆け出しの映画監督・木下俊弘と脚本家・坪井小助は顔見知りではあったものも、友人と呼べるほどの仲ではない。共通の知人である俳優・船木テツヲに誘われ、東京を離れて旅に出たが、なんと船木は寝坊。仕方なくふたりは歩き出した。寒い寒い冬の日。やってきたのは鳥取県のとある温泉街。日本海をふたりで眺めていると若い女・敦子が裸同然で走って近づいてきた。この寒空の下、何を思ったか泳いでいたら服も荷物も波にさらわれてしまったという。そしてなんとなく、ふたりの男と一人の女の旅が始まった・・・。
ふたりの男とひとりの女の ちょっとせつないロードムービー
『リンダ リンダ リンダ』『カラオケ行こ!』などの山下敦弘監督がつげ義春世界を映画化。 原作を大胆に脚色し、独自のオフビート・コメディに融合、くすくす笑いを呼びまくる。山下監督は大阪芸大卒業制作の『どんてん生活』でデビュー。各方面で絶賛され、東京国際映画祭の新人監督に対する助成金を見事に獲得して第2作『ばかのハコ船』を製作。本作はその次に作られた通称"ダメ男三部作"の第3作目となる。
つげ義春は代表作の「ねじ式」「無能の人」「ゲンセンカン主人」などが次々と映画化される伝説の漫画家。旅ものと呼ばれる「リアリズムの宿」と「会津の釣り宿」が本作の原作となっている。大きな出来事がないものの、ほっこりさせられるあたたかな作品たちだ。
坪井役には演出家兼役者の長塚圭史。木下役には山下監督作品常連の山本浩司。そして、ヒロインは『そして父になる』『茜色に焼かれる』の尾野真千子。
【モーニングショー】無能の人
【Moning Show】Nowhere Man
1991年/日本/107分/35mm
■監督 竹中直人
■原作 つげ義春「無能の人」
■総合プロデュース 奥山和由
■脚本 丸内敏治
■撮影 佐々木原保志
■編集 奥原好幸
■音楽 GONTITI
■出演 竹中直人/ 風吹ジュン/三東康太郎/山口美也子/ マルセ太郎/神戸浩/大杉漣/神代辰巳/いとうせいこう/久我美子/須賀不二男/原田芳雄/三浦友和
©1991 松竹株式会社
【6/6(土)~6/12(金)上映】
この広い宇宙に 私たち家族三人だけみたい…
多摩川の川原に自力で小屋を建て、拾った石を売る”無能の人”助川助三。かつては漫画家として名をなしたこともあったが、次第に時流に乗り遅れ、そのあと手を出した中古カメラ業や古物業にも失敗し、こうするより他なくなったのである。来年は小学校に入学する息子・三助もいるというのに、一家を支える財源は、妻・モモ子のチラシ配りだけだ。ある日、石の愛好家の専門誌を読んだ助三は、素人でも参加できるオークションが行われていることを知り、代々木にある「愛石狂会」を訪ねてみることに…。
「忘れていた映画を観る楽しさが蘇った。」——つげ義春
本作は、つげ義春の「無能の人」を原作に、この極めて個性的なコミック作家の集大成とも言える作品を、映画・演劇・テレビなど様々なメディアで特異な活動を続ける竹中直人の監督・主演で映画化したものである。
出演は、主人公の助川助三を監督の竹中直人自らが演じ、妻・モモ子役に演技派の風吹ジュン。この他、一人芝居で有名なマルセ太郎、個性派女優の山口美也子、小説・舞台など様々なジャンルで活躍するいとうせいこう、『青春の蹉跌』『恋文』を監督した名匠・神代辰巳、日本映画界を代表する俳優・三浦友和が信じられないような役で登場するなど、従来の日本映画の常識を超えた異色のキャストが絶妙なアンサンブルを見せる。
また、寡黙な作風の原作のムードを壊さずに映画化するために、竹中直人が苦心したのが映画音楽。起用されたのは、ギター・デュオのGONTITI。イージーリスニングの旗手として国際的に活動を続ける彼らが初めて映画音楽を担当した。特に本作では監督からの要望で、昔懐かしいウクレレを主体にした演奏をじっくりと聞かせている。
【レイトショー】やくたたず
【Late Show】Good for Nothing
2010年/日本/76分/DCP
■監督・脚本・撮影・編集 三宅唱
■助監督 古田晃
■美術 久保田誠
■録音 高柳翼
■出演 柴田貴哉/玉井英棋/山段智昭/片方一予/櫛野剛一/足立智充/南利雄
©︎MIYAKE Sho
【6/6(土)~6/12(金)上映】
高校卒業を控えたテツオたち3人は、先輩が勤める地元の防犯警備会社でバイトを始めるが……。一面雪に覆われた北海道を舞台に、ボンクラ高校生の日常と仕事、そして彼らが巻き込まれる思わぬ事件を、ザラついたモノクロームで捉えた青春群像。村上淳、加瀬亮などの俳優に絶賛された、三宅唱の初長編作。



























