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神への到達を目指したキリストは、極めて人間的なものと、超人間的なものの両面を持っていた
このキリストの二元性は私にとって、以前から尽きぬ謎であった
若い頃から私の悩みは、精神と肉体とのあいだの飽くことの無い苛烈な闘いから生まれてきた
私の魂はその二つの力が衝突する戦場である
  ――ニコス・カザンザキス(『最後の誘惑』より)

日本の沖縄と長崎を舞台にしたアメリカ映画が2017年に公開された。 『ハクソー・リッジ』『沈黙 ―サイレンス―』、監督はメル・ギブソンとマーティン・スコセッシ。 どちらも筋金入りのカトリック教徒として知られている作家たちだ。

メル・ギブソンにはイエス・キリストが処刑されるまでの最期の12時間を描いた『パッション』(2004)。 マーティン・スコセッシにはキリストの生涯を改変して大胆な解釈で描いた、ニコス・カザンザキス原作の『最後の誘惑』(1988)など、 直接イエス・キリストを描いた作品もあるが、どちらも信者たちから強い反発の声があがり大きな論争を巻き起こした。

今回の作品はイエス・キリストの物語ではない。 しかし宗教を背景に、人々が生死をかけて己の信念と向き合って葛藤し、どう生きるかという物語を通じて、 宗教の本質を問い直し、自分の存在意義を根底から考えようとする者を描いている。

キリシタン弾圧の物語を通して、日本の土着宗教とキリスト教の同異を浮き彫りにしつつ、 信仰の本質に迫った遠藤周作による原作「沈黙」の映画化作品『沈黙 ―サイレンス―』。 「踏み絵」を目の前にここで問われる殉教と棄教の選択は、生死に直結する選択でありながら、 その者たちの魂の救済を取り上げかねない、信徒の人間の価値観を根底から揺さぶろうとする問題だ。 「沈黙」の原作はその踏み絵の描写から、カトリック教会に禁書扱いされた書物でもある。

宗教上の理由から、衛生兵として武器を持たずに戦場に行った男の実話を基に作られた『ハクソー・リッジ』。 助けずに生きのびるか、命の危険を冒してでも人を助けるか。もし世を憂う者が命がけで自爆テロを行うならば、 この映画の主人公はその全く正反対の場所に立って自分の意志を問おうとする者だと言えるかもしれない。 人を殺すことなく戦場に立ち「一人でも多くの仲間を救いたい」という信念を実現した反戦英雄譚だ。

棄教を迫られて拷問を受けるこの世に地獄を移したような信徒たちへの弾圧の姿。 苛烈を極める沖縄の、生存率58.8%といわれる前田高地での戦闘の、焦土と血の匂いが漂ってくるような描写。 選択が生死に直結する強い葛藤の中、もし生死をかけて臨んだとしても己の魂は救済されるのか、神にいくら問うても声は聞こえない。

それはあたかもキリスト自身が最期の瞬間に責苦を受けながら人間の原罪を贖おうとする姿、 「Passion=受難」を作家が主人公たちに課しているようにさえ見えます。 引き裂かれそうなほどの極限状態で、人間は一体何を信じることができるのか。

現代の人間性を問うように、この時代に生み落とされた作品たち。 ぜひご鑑賞ください。

(ぽっけ)

沈黙 ―サイレンス―
Silence
(2016年 アメリカ 161分 DCP PG12 シネスコ) pic 2017年11月25日から12月1日まで上映 ■監督・製作・脚本 マーティン・スコセッシ
■製作 エマ・ティリンジャー・コスコフ/ランドール・エメット/バーバラ・デ・フィーナ/ガストン・パヴロヴィッチ/アーウィン・ウィンクラー/ヴィットリオ・チェッキ・ゴーリ
■脚本 ジェイ・コックス
■原作 遠藤周作「沈黙」(新潮文庫刊)
■撮影 ロドリゴ・プリエト
■編集 セルマ・スクーンメイカー
■音楽 キム・アレン・クルーゲ/キャスリン・クルーゲ

■出演 アンドリュー・ガーフィールド/アダム・ドライバー/浅野忠信/窪塚洋介/イッセー尾形/塚本晋也/小松菜奈/加瀬亮/笈田ヨシ/リーアム・ニーソン

■第89回アカデミー賞撮影賞ノミネート

©2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

主よ あなたは何故

pic 17世紀、江戸初期。幕府による激しいキリシタン弾圧下の長崎。日本で捕えられ棄教したとされる宣教師フェレイラを追い、弟子のロドリゴとガルペは日本人キチジローの手引きでマカオから長崎へと潜入し、弾圧を逃れた“隠れキリシタン”と呼ばれる日本人らと出会う。しかしキチジローの裏切りにより遂にロドリゴらも囚われの身に。頑ななロドリゴに対し、長崎奉行の井上筑後守は棄教を迫る。守るべきは大いなる信念か、目の前の弱々しい命か。心に迷いが生じた事でわかった、強いと疑わなかった自分自身の弱さ。追い詰められた彼の決断とは――。

はじめて原作を読んだあの日から28年

pic刊行から50年、遠藤周作没後20年の2016年。世界の映画人たちに最も尊敬され、アカデミー賞にも輝く巨匠マーティン・スコセッシ監督が、戦後日本文学の金字塔にして、世界20カ国以上で翻訳され、今も読み継がれている遠藤周作の「沈黙」をついに映画化した。

pic この世紀の一大プロジェクトに、ハリウッドと日本から豪華キャストが集結。主演のアンドリュー・ガーフィールドを筆頭に、アダム・ドライバー、リーアム・ニーソン、日本からは窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシら、各世代の実力派が名を連ねる。

人間の強さ、弱さとは? 信じることとは? そして、生きることの意味とは? 貧困や格差、異文化の衝突など、この混迷を極める現代において、人類の永遠のテーマをあまりに深く、あまりに尊く描いた、マーティン・スコセッシの最高傑作がいよいよ上陸する。

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ハクソー・リッジ
Hacksaw Ridge
(2016年 アメリカ/オーストラリア 139分 DCP PG12 シネスコ)
pic 2017年11月25日から12月1日まで上映 ■監督 メル・ギブソン
■脚本 ロバート・シェンカン/アンドリュー・ナイト
■撮影 サイモン・ダガン
■編集 ジョン・ギルバート
■録音 アンディ・ライト/ケヴィン・オコンネル/ロバート・マッケンジー
■音楽 ルパート・グレグソン=ウィリアムズ

■出演 アンドリュー・ガーフィールド/サム・ワーシントン/ルーク・ブレイシー/テリーサ・パーマー/ヴィンス・ヴォーン/ヒューゴ・ウィーヴィング

■第89回アカデミー賞編集賞・録音賞受賞、作品賞・監督賞・主演男優賞ほか3部門ノミネート/第74回 ゴールデングローブ賞作品賞・監督賞・主演男優賞ノミネート ほか多数受賞ノミネート

© Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016

戦争は命を奪うが、僕は、命を救う

pic緑豊かなヴァージニア州の田舎町で育ったデズモンド・ドスは、第2次世界大戦が激化する中、陸軍への志願を決める。だが、訓練初日から、デズモンドの「生涯、武器には触らない」という主張が部隊を揺るがす。上官と仲間の兵士たちから責められても、デズモンドは頑として銃をとらない。とうとう軍法会議にかけられるが、思いがけない助けを得て、主張を認められたデズモンドは激戦地の“ハクソー・リッジ”へ赴く。そこは、アメリカ軍が史上最大の苦戦を強いられている戦場だった。目の前で次々と兵士が倒れて行く中、遂にデズモンドの“命を救う戦い”が始まる――。

心を揺さぶる驚愕の実話!

pic 第2次世界大戦の激戦地“ハクソー・リッジ”で何ひとつ武器を持たずに、たった1人で75人もの命を救った男がいる。彼の名はデズモンド・ドス。なぜ、彼は武器を持たずに戦場へと向かい、多くの兵士たちを救ったのか? 誰もが想像を絶する至近戦が繰り広げられた戦場で、彼の行動がいかに勇気のあるものだったか――。臨場感あふれる戦闘シーンが、1人の兵士の葛藤と強い信念を浮き彫りにする、実話から生まれた感動の物語。

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主人公デズモンドを演じるのは、『沈黙 ―サイレンス―』のアンドリュー・ガーフィールド。本作でアカデミー賞主演男優賞に初ノミネートされた。監督は『ブレイブハート』でアカデミー賞作品賞、監督賞をはじめとする5部門に輝き、監督としての才能を絶賛されたメル・ギブソン。10年ぶりに監督を務めた本作で、アカデミー賞をはじめ世界各国の映画賞を受賞し、鮮やかな復活を遂げた。

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