top

『シークレット・オブ・モンスター』そして『エヴォリューション』はどちらも不穏な空気に満ちた作品だ。物語の設定は違えどもこの二つに共通しているのは、少年たちの閉鎖的な空間の生活を通して語られる「何かがおかしい」という感覚である。

私たちの現実と似ているようで、怪談やおとぎ話のように掴みどころのない不気味さが漂っている。『シークレット・オブ・モンスター』の舞台であるあまりにも大きい邸宅、または『エヴォリューション』の人里離れた島に、人肌の温度は感じられない。彼らが暮らす世界の背後に見え隠れする、グロテスクな事実を強調しているようだ。

どちらの映画も多くは語らない。「謎は謎のまま」と言わんばかりに突き放され、強引に答えを見つけてもどこかしっくりとこない。私たちに残るのはその強烈な印象と、ある体験を目撃したという自分の中の確信だけだ。

それはまさに夢を見るという体験に近いのかもしれない。ただならぬ緊張感や不可解な出来事の連続――目が覚めた瞬間にすべてが幻だったと理解しても、尾を引くあの感触はいつまでも残り続ける。この二つの作品は、まるで悪夢のように、私たちの奥底にあるイマジネーションを刺激してくれるはずだ。

(ジャック)

シークレット・オブ・モンスター
THE CHILDHOOD OF A LEADER
(2015年 イギリス/ハンガリー/フランス 116分 DCP ビスタ) pic 2017年4月22日から4月28日まで上映 ■監督・脚本 ブラディ・コーベット
■脚本 モナ・ファストボルド
■撮影 ロル・クロウリー
■音楽 スコット・ウォーカー

■出演 ベレニス・ベジョ/リアム・カニンガム/ステイシー・マーティン/ロバート・パティンソン/トム・スウィート

■2015年ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門監督賞・初長編作品賞受賞/2016年インディペンデント・スピリット賞撮影賞・新人作品賞ノミネート

©COAL MOVIE LIMITED 2015

何が少年を独裁者へと変貌させたのか――

pic 1918年。ヴェルサイユ条約締結を目的にフランスに送り込まれた米政府高官。彼には、神への深い信仰心をもつ妻と、まるで少女のように美しい息子がいた。しかし、その少年は終始何かに不満を抱え、教会への投石や部屋に籠城するなど、その不可解な言動の数々に両親は頭を悩ましていた。その周囲の心配をよそに、彼の性格は次第に恐ろしいほど歪み始める。そして、ようやくヴェルサイユ条約の調印を終えたある夜、ついに彼の中の怪物がうめき声を上げる――。

心理ミステリーの巨匠ジョナサン・デミが大絶賛
 戦慄の謎に迫る心理パズルミステリー

pic20世紀は悪名高き独裁者が数多く登場した時代だ。アドルフ・ヒトラー、ベニート・ムッソリーニ、ヨシフ・スターリン…。彼らはいかにして権力欲を募らせ、狂気のモンスターへと変貌していったのか。本作の監督と脚本を手がけたブラディ・コーベットは、その最大の謎をこれまでになかった新しい形で観る者たちに突きつける。

pic コーベットの才能に、真っ先に反応したのが『羊たちの沈黙』で知られるジョナサン・デミ監督。2015年ヴェネチア国際映画祭でオリゾンティ部門の審査委員長を務めた彼は、同部門の監督賞と初作品賞をコーベットに贈り、「身震いする緊張感、戦慄の映画」と大絶賛。心理ミステリーと言えば右に出る者なしの巨匠をも唸らせた。

独裁者となる少年の母親役には『アーティスト』のベレニス・ベジョ。少年役には本作が映画デビューのトム・スウィート。その他、ステイシー・マーティンやロバート・パティンソンなど豪華俳優陣が脇を固める。

このページのトップへ
line

エヴォリューション
EVOLUTION
(2015年 フランス/スペイン/ベルギー 81分 DCP PG12 シネスコ)
pic 2017年4月22日から4月28日まで上映 ■監督・脚本 ルシール・アザリロヴィック
■脚本 アランテ・カヴァイテ
■撮影 マニュエル・ダコッセ
■音楽 ザカリアス・M・デ・ラ・リバ/ヘスス・ディアス

■出演 マックス・ブラバン/ロクサーヌ・デュラン/ジュリー=マリー・パルマンティエ

■トロント国際映画祭ヴァンガード部門正式出品/サン・セバスチャン国際映画祭審査員特別賞・最優秀撮影賞受賞/ストックホルム国際映画祭最優秀撮影賞受賞ほか多数受賞

©LES FILMS DU WORSO・ NOODLES PRODUCTION・VOLCANO FILMS・EVO FILMS A.I.E. ・SCOPE PICTURES・LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015

そこはユートピアか、
ディストピアか。

pic少年と女性しかいない、人里離れた島に母親と暮らす10歳のニコラ。その島では全ての少年が奇妙な医療行為の対象となっている。「なにかがおかしい」と異変に気付き始めたニコラは、夜半に出かける母親の後をつける。そこで母親がほかの女性たちと海辺でする「ある行為」を目撃し、秘密を探ろうとしたのが悪夢の始まりだった。

『エコール』のルシール・アザリロヴィック監督が贈る
まるで悪夢のような、禁断のダークファンタジー

pic 秘密の園の少女たちの世界を描いた『エコール』から10年。ルシール・アザリロヴィック監督最新作は、原始的な感情を呼び覚ます圧倒的な映像美で描く、倫理や道徳を超えた81分間の美しい“悪夢”。

picトロント国際映画祭、サンセバスチャン国際映画祭など、各映画祭で上映されるやいなや、「初期クローネンバーグ、リンチを思わせる!」「ルイス・キャロル、グリム兄弟、アンデルセンの死体を掘り起こした」等、大きな反響を巻き起こした。

少年と女性しかいない島――奇妙な医療行為を施される少年たち、夜半に海辺に集まる女たち、エヴォリューション(進化)とは何なのか…?

このページのトップへ