toppic ★週の途中で作品が替わります。スケジュールにご注意ください。
★『偽大学生』『妻は告白する』は、製作から長い年月が経っているため、本編上映中お見苦しい箇所・お聞き苦しい箇所がございます。ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願いいたします。

増村保造

監督■増村保造

1924年8月25日山梨県甲府市に生まれる。旧制第一高等学校、東京大学法学部と秀才コースを歩む。

1947年、戦後の混乱の最中に大映の助監督募集に合格。他方で東京大学文学部哲学科に再入学し、学業と仕事を両立させて1951年に卒業。1952年、ローマの映画センターに送った論文が合格し、イタリア留学を果たす。帰国後、溝口健二の『楊貴妃』『新・平家物語』や溝口の遺作となった『赤線地帯』に助監督として参加、つづけて市川崑作品に助監督としてつく。

1957年大映作品『くちづけ』で監督デビュー、中平康とともに、一躍ニューウェーブの映画監督として脚光を浴びる。以後も大映の専属監督として活躍し、48本の作品を残す。監督第二作目『青空娘』で組んだ若尾文子とは20作品で組み、『刺青』『卍』『妻は告白する』『爛』『「女の小箱」より 夫が見た』『清作の妻』『赤い天使』など、多くの傑作を作り上げた。

他にも、女優では野添ひとみ、岸田今日子、安田(大楠)道代、緑魔子、男優では市川雷蔵、勝新太郎、田宮二郎、川口浩といった名優たちと組み、『巨人と玩具』『黒の試走車』『兵隊やくざ』『陸軍中野学校』『痴人の愛』『盲獣』など、多岐にわたるジャンルで代表作を残す。その後、ATGなどで『大地の子守歌』『曽根崎心中』といった後期代表作を監督。80年には、イタリアを舞台にイタリア人のスタッフ・キャストを用いて日=伊合作映画『エデンの園』を監督した。

70年代後半は大映テレビを中心にテレビドラマの演出・脚本を手掛け、74年の『赤い迷路』に始まる『赤い』シリーズや、『スチュワーデス物語』などにかかわった。1986年11月23日、脳内出血で死去。享年62歳。生涯に残した監督作品は57本を数える。

フィルモグラフィ

・楊貴妃(1955)助監督
・赤線地帯(1956)助監督
・処刑の部屋(1956)助監督
・日本橋(1956)助監督
・満員電車(1957)助監督
・くちづけ(1957)
・青空娘(1957)
・暖流(1957)
・氷壁(1958)
・巨人と玩具(1958)
・不敵な男(1958)
・親不孝通り(1958)
・最高殊勲夫人(1959)
・氾濫(1959)
・美貌に罪あり(1959)
・闇を横切れ(1959)
・女経(じょきょう)(1960)
・からっ風野郎(1960)
・足にさわった女(1960)
・偽大学生(1960)
・恋にいのちを(1961)
・好色一代男(1961)
・妻は告白する(1961)
・うるさい妹たち(1961京)
・爛(ただれ)(1962)
・黒の試走車(テストカー)(1962)
・女の一生(1962)
・黒の報告書(1963)
・嘘(1963)
・ぐれん隊純情派(1963)
・現代インチキ物語 騙し屋(1964)
・「女の小箱」より 夫が見た(1964)
・卍(まんじ)(1964)
・黒の超特急(1964)
・兵隊やくざ(1965)
・清作の妻(1965)
・刺青(1966)
・陸軍中野学校(1966)
・赤い天使(1966)
・妻二人(1967)
・痴人の愛(1967)
・華岡青洲の妻(1967)
・大悪党(1968)
・セックス・チェック 第二の性(1968)
・積木の箱(1968)
・濡れた二人(1968)
・盲獣(1969)
・千羽鶴(1969)
・女体(1969)
・でんきくらげ(1970)
・やくざ絶唱(1970)
・しびれくらげ(1970)
・遊び(1971)
・新兵隊やくざ 火線(1972)
・音楽(1972/行動社=ATG)
・御用牙 かみそり半蔵地獄責め(1973)
・悪名 縄張荒らし(1974)
・動脈列島(1975)
・大地の子守唄(1976)
・曽根崎心中(1978)
・エデンの園  Giard dell 'Eden(1980)
・この子の七つのお祝いに(1982)

*監督作品のみ

1957年『くちづけ』で監督デビューし、1986年に没するまでの短い生涯に増村保造が残した鮮烈な作品群は、今なお世界中の映画ファンを魅了し、クリエイターたちを刺激しつづけています。いくつかの変遷を経る魅力的なフィルモグラフィにあって、ひとつの頂点をあげるとするならば、やはり60年代に若尾文子と組んだ作品群になると思います。
 
増村は自分の欲望する理念に忠実に行動し、社会規範から逸脱した女性を好んで主人公に選びました。所詮は社会組織に取り込まれるしかないような日本男性を主人公に選んで掘り下げたとしても血の通った怒りや悲しみ、叫びをもつ人間らしい人間は描けないだろうという意識からです。

人間にまといつく虚飾を取り払い、その根元的存在をあらわにしようとした増村。若尾文子という美しき共犯者を得ることでその特異な作品世界は一気に開花します。

今回上映するのは、そんな黄金時代にうまれた4本です。

日露戦争時の閉鎖的な村社会を舞台に、模範兵の夫を戦場に行かせないために妻がとった行動とその顛末を冷徹に描き切った究極の恋愛映画『清作の妻』

夏山で遭難の極限状態の末、夫のロープを切断した妻の行動が正当か否かを巡る裁判を通してヒロインの狂気の愛が浮かび上がる『妻は告白する』

谷崎潤一郎原作、撮影に名匠宮川一夫を迎え、次々に男を喰らい殺すヒロイン・若尾文子の妖艶な魅力を引き出した時代劇『刺青』

今回上映される中では、例外的に男性であるジェリー藤尾を主人公とする『偽大学生』もまた、某大学内での偽証を発端とする狂気にみちた事件をエネルギッシュに描いたヘビーな傑作です。

旧来の日本映画にはあまり見られない、一見すると過剰とすらいえるような生への情熱にみちた登場人物たち。彼らが現実世界と巻き起こす軋轢の果てにたどる運命を、増村は突き放したようにクールに描出します。それは時として、残酷にすらうつるかもしれません。

しかし、彼らの中に人間の真実を見ようとした増村は、人間の可能性をとことん信じた、真の意味でヒューマニズムあふれる映画作家だったと思います。残酷な現実を直視しつつ、生きていこうとする静謐な祈りのような美しさに満ちた『清作の妻』の後半を見るたびに、そう思えてなりません。

(ルー)

刺青
pic(1966年 日本 86分 35mm R-18 シネスコ/MONO)
2013年10月19日から10月21日まで上映
■監督 増村保造
■原作 谷崎潤一郎
■脚本 新藤兼人
■撮影 宮川一夫
■美術 西岡善信
■編集 菅沼完二
■音楽 鏑木創

■出演 若尾文子/長谷川明男/山本学/佐藤慶/須賀不二男/内田朝雄/藤原礼子

★3日間上映です。

わたしを女にしたのはいれづみの妖しい美しさ…
『鍵』『卍』につぐ谷崎文学の完全映画化!

質屋の娘・お艶は、ある雪の夜、愛しい手代の新助とともに駆け落ちを果たす。二人きりで短い蜜月を過ごすが、かくまってくれた船宿の主人・権次は札付きの悪党で、新助を殺しお艶を売り払ってしまおうと考えていた。そのお艶に目を付けている男がもう一人いた。刺青師の清吉である。清吉は他の何ものにも代え難いお艶の白く美しい肌に、一世一代の刺青を彫りたいと願っていたのだ…。

『卍』のヒットを受け、再び谷崎文学に挑んだ増村保造は、宮川一夫の流麗なカメラワークを得て、美しく激しい情念の世界を見事に映像化した。脚本に新藤兼人、美術に西岡善信と鉄壁のスタッフに支えられた、増村保造の最高傑作と名高い一本である。

『刺青』の成功を語る時には、若尾文子の存在は欠かせない。背中に彫られた女郎蜘蛛さながらに、まさしく男の生き血を吸って生きるお艶を、若尾は妖しく激しく演じ切った。



清作の妻
pic(1965年 日本 93分 35mm シネスコ/MONO)
2013年10月19日から10月21日まで上映
■監督 増村保造
■原作 吉田絃二郎
■脚本 新藤兼人
■撮影 秋野友宏
■美術 下河原友雄
■編集 中静達治
■音楽 山内正

■出演 若尾文子/田村高廣/成田三樹夫/紺野ユカ/殿山泰司

■1965年ブルーリボン賞主演女優賞受賞

★3日間上映です。

やっと掴んだ女の幸せを、
戦場が奪い去ろうとする…
妻はふるえる手で夫の目を狙った!

病身の父を抱えた一家の生計を支えるため、お兼は老人の妾となっていた。やがて老人は大金を残し他界、父も同じくして死んだ。お兼は母とともに、母がかつて逃げるようにして離れた村へ戻ってきたが、村人たちの目はみな冷たかった。

お兼が村の模範青年である清作と出会ったのは、母の急病で、清作が医者のもとへ走ってからだった。二人は周囲の反対を無視して結婚した。しかし日露戦争が勃発し、清作のもとに召集令状が届く。

戦前、村田実監督により映画化された吉田絃二郎の原作の再映画化。戦争という状況の中で、愛する夫のために戦う女の凄まじさと、その凄まじさの中にある美しさを描き出す。単なる反戦映画ではない、恐ろしくも美しい恋愛映画の傑作。



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偽大学生
pic(1960年 日本 94分 35mm シネスコ/MONO)
2013年10月22日から10月25日まで上映
■監督 増村保造
■原作 大江健三郎「偽証の時」
■脚本 白坂依志夫
■撮影 村井博
■美術 渡辺竹三郎
■編集 中静達治
■音楽 芥川也寸志

■出演 若尾文子/ジェリー藤尾/藤巻潤/船越英二/伊丹一三/岩崎加根子/中村伸郎

★4日間上映です。

私は忘れない!
あの偽大学生に噛まれた傷の痛みを…
噛まれた私の傷だけが真実を叫んでいる!

T大歴史学研究会のメンバーに新入生・大津彦一が加わった。上級の木田や睦子は彼を疑うことなく仲間として迎えた。リーダーの空谷が逮捕されたのも、この新入生からの伝言で分った。翌日から、空谷の保釈を要求する坐りこみが始まり、勿論、彦一は真先にその運動に加わった。

警察官と学生のにらみ合いは乱闘に発展した。彦一の奮戦はひときわ目立ち、傷だらけの学生たちに混って、彦一も留置場の中で、学生運動の英雄に仲間入りしたような錯覚に陥った。だが、警察側はすでに彦一が偽大学生であることを見破っていた…。

当時、日本文学のニュー・ウェーブだった大江健三郎の「偽証の時」が原作。1960年という製作年を反映し、学生運動のエネルギーの奔流を、青春の光と心の闇の両面から描いている。若尾文子は彦一が憧れる美しき女学生・睦子を演じる。また伊丹一三(十三)が学生運動のリーダー役で出演している。



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妻は告白する
pic(1961年 日本 91分 35mm シネスコ/MONO)
2013年10月22日から10月25日まで上映
■監督 増村保造
■原作 円山雅也
■脚本 井手雅人
■撮影 小林節雄
■美術 渡辺竹三郎
■編集 中静達治
■音楽 北村和夫

■出演 若尾文子/川口浩/馬淵晴子/根上淳/高松英郎/小沢栄太郎

★4日間上映です。

私が夫を殺すような女に見えて?
死に直面した女の
大胆で微妙な心理をえぐった文芸映画

北穂高滝谷の岩壁にしがみついていた、3人のパーティの1人が足を滑らせて転落した。最後部の男によって辛うじて支えられていたが、落ちるのは時間の問題だった。その時、真ん中にいた女はナイフで自分の下のザイルを切った。死んだのは女の夫で大学の薬学の助教授滝川、もう一人は、愛人の幸田だった。

妻滝川彩子は告発されて法廷に立った。彩子が幸田と情を通じていた事、夫に五百万円の生命保険がかかっていることをもとに、検事は有罪を主張し、弁護士は殺意を持っていなかった点、自分の生命を守るためのやむを得ぬ行為という点から、無罪を主張した…。

法とモラルと真実を追う異色の文芸作品。登山中の3人の男女を襲った事故。1人の男の死…それは妻が夫を殺害するという恐ろしい事件だったのか。若尾文子をアイドルから日本映画史を飾る大女優の道へと導いた傑作。恐ろしいまでに強い愛に生き、遂には狂気へと陥っていく美しい女を、若尾は全身全霊で演じた。



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