toppic ★3日間上映です。スケジュールにご注意ください。

アメリカ映画の名作特集第三弾は、アメリカン・ニューシネマを代表する刑事ドラマ2本、
『夜の大捜査線』『フレンチ・コネクション』の上映です。

自分で見たものを信じ、経験から答えを導き出すこと。言葉にすれば自明なことが、なんて難しいんだろうと感じる。私たちは他者から影響を受けるし、それは必ずしも悪い事ばかりではないはずだ。けれど実際は、他人の評価が気になったり、言動に流されることなんてしばしばだし、思わず神さまにすがりたくなる事だってある。

そんな私からすると『夜の大捜査線』の黒人刑事バージルはすごい。南部の未だ人種差別の根強い街で、殺人事件に巻き込まれた彼は、殺人犯を追い、差別と闘う。バージルは孤立無援で、いわば街全体を一人で相手取るのだ。そんな彼の武器は銃でも権力でもない。

冷静沈着な佇まいと確かな知性から生み出される状況分析能力、そして何者にも屈しない意思の強さ。犯人と疑われようと慌てず、死体を観察し、確かな情報を得てゆく。窮地を救うのは自分自身に他ならない。バージルもまた、己の想像力とスキルで任務を成し遂げる“孤独な男”に違いないのだ。

そして、事あるごとに衝突する警察署長ビルとの奇妙な友情は、決して慣れ合わず、ディスコミュニケーションのひりつきと笑いが、お互いがそれぞれの仕事を成し遂げようとする二人の距離感が、心地よくすら感じられる。これぞハードボイルドだろうか。

スマートな刑事バージルとは異なり、『フレンチ・コネクション』の激情型の刑事ドイルは、泥臭く、容姿もなんだか垢抜けない。だが、とてつもなく恐ろしい。暴走とも言える程の情熱で相棒のラソーと共に、ニューヨークに蔓延る麻薬を根絶やしにせんと、危険を顧みずにマフィアを追う。執拗な尾行。そして犯罪者には容赦のない暴力。だがドイルにあるのは善悪ではなく、獲物を追うこと。それが自らにとっての真実だ。

何よりも信を置く自分。もしその自分が社会的にバランスを欠いていたならば?
正しいのは社会? それとも?

アメリカン・ニューシネマの幕開けは、
アメリカの様々な問題が表面化した60年代〜70年代。
人種問題、ドラッグ、ベトナム戦争…。

ライフスタイルや価値観が多様化し、確固たる正義(と思われたもの)が揺らぎを見せ始めた時代に制作された両作品。今なお解決しない問題を孕みつつも、極上のエンターテイメントして完成された作品をぜひ劇場でご覧になってください。

(ミスター)

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夜の大捜査線
IN THE HEAT OF THE NIGHT
(1967年 アメリカ 109分 ビスタ/ドルビーA) 2013年3月9日から3月11日まで上映
■監督 ノーマン・ジュイソン
■原作 ジョン・ボール
■脚本 スターリング・シリファント
■撮影 ハスケル・ウェクスラー
■編集 ハル・アシュビー
■音楽 クインシー・ジョーンズ
■主題歌 レイ・チャールズ

■出演 ロッド・スタイガー/シドニー・ポワチエ/ウォーレン・オーツ/リー・グラント/スコット・ウィルソン/ジェームズ・パターソン/クエンティン・ディーン/ラリー・ゲイツ/ウィリアム・シャラート/ビア・リチャーズ

■1967年アカデミー賞作品賞・主演男優賞賞(ロッド・スタイガー)・脚色賞・編集賞受賞/ゴールデン・グローブ賞作品賞・男優賞・脚本賞受賞

★3日間上映です。

すべてが溶けてしまうような真夜中の熱気!
ヘッド・ライトに浮んだ異常な犯罪!
するどい映画の興奮に満ちた鮮烈の秀作!!

picミシシッピ州の田舎町スパルタ。うだるような暑さの夜、警官サム・ウッドは深夜のパトロールに出かけた。いつものコースを回っていると、乗り捨てられた車の陰に男の死体を発見した。死んでいたのは、町の有名な実業家だった。

サムの連絡を受けた新任の警察署長ビル・ギレスピーは早速行動を開始。平和なこの町では殺人事件など一度も扱ったことがない。サムは気負い立ち、駅で列車を待っていた黒人をいきなり容疑者として逮捕してしまう。しかしその黒人こそ、フィラデルフィア警察の殺人課で一番優秀な刑事、バージル・ティッブスだった。捜査に難航していたビルは、しぶしぶバージルに事件解決の協力を頼むが…。

picジョン・ポールのベストセラー小説「夜の熱気の中で」を原作に、アメリカ南部の小さな町で突然起こった殺人事件をめぐって、黒人の刑事と白人の警察署長が対立しながらも事件を解決するスリリングなサスペンス。当時最盛期だった公民権運動もあり、第40回アカデミー賞作品賞ほか4部門を受賞する高い評価をうけた。

主演は黒人俳優の先駆者である名優シドニー・ポワチエと、本作でアカデミー賞主演男優賞に輝いたロッド・スタイガー。また『ワイルド・バンチ』や『断絶』のウォーレン・オーツが警官サムを演じる。音楽監督はクインシー・ジョーンズ、主題歌はレイ・チャールズが歌い大ヒットした。


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フレンチ・コネクション
THE FRENCH CONNECTION
(1971年 アメリカ 105分 ビスタ/MONO) 2013年3月9日から3月11日まで上映
■監督 ウィリアム・フリードキン
■原作 ロビン・ムーア
■脚本 アーネスト・タイディマン
■撮影 オーウェン・ロイズマン
■音楽 ドン・エリス

■出演 ジーン・ハックマン/ロイ・シャイダー/フェルナンド・レイ/トニー・ロー・ビアンコ/マルセル・ボズフィ/フレデリック・ド・パスカル/エディ・イーガン/ソニー・グロッソ

■1967年アカデミー賞作品賞・監督賞・主演男優賞賞(ジーン・ハックマン)・脚色賞・編集賞受賞/ゴールデン・グローブ賞作品賞・男優賞・監督賞受賞

★3日間上映です。

獲物を見つけた猟犬は決して振返らない
それを捕えるか 心臓が破れるまでは…
追う!追う!追う! 追うことの中にだけ男は生きた

pic「ポパイ」と呼ばれるニューヨーク市警の刑事ドイルは、相棒のラソーとともに、ある麻薬密輸事件を追っていた。捜査の末、大規模な麻薬密輸ルート“フレンチ・コネクション”を持つ組織が浮上してくる。

ドイルたちは組織のボスとされるシャルニエを執拗に追うが、幾度も彼を逃がしてしまう。これ以上追及の手を恐れたシャルニエは殺し屋を用意し、ドイルたちの命を狙うのだった…。

picロビン・ムーアの小説「フレンチ・コネクション」を原作とした刑事ドラマの金字塔。実際に起きた麻薬密輸事件を元に、『エクソシスト』のウィリアム・フリードキン監督が、本格的なドキュメンタリータッチで描いた。撮影はニューヨークとマルセイユで行われ、特にニューヨークのロケは86カ所におよぶ本格的なもの。「ポパイ」を演じたジーン・ハックマンの熱演も光り、第44回アカデミー賞において作品賞・監督賞・主演男優賞・脚色賞・編集賞の5部門を受賞した。また、この映画のモデルとなった実在の刑事エディー・イーガンとソニー・グロッソーが特別出演している。電車で逃げる殺し屋を直下の道路を使って自動車で追いかけるシーンは映画史に残る名場面である。



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