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スペインとフランス、ブルジョワとメイドの交流を描く
「屋根裏部屋のマリアたち」と、
教師と生徒、学校生活と移民問題を描く
「ぼくたちのムッシュ・ラザール」が、
不思議な魅力に溢れているのは、
優しさとユーモアに満ちている一方で、
出会いに対する冷静さを持っているからだと思う。

異なる考え方、異なる立場の人々と触れ合うとき、
少し煩わしいような気持ちになる。
それは相手の環境に自分の身をおくということと、
自分の生活に彼らがかかわってくるという、
2つの困難があるからだ。
できるだけ摩擦のないように、
私たちは住み分けてしまう。

それは雇い主とメイドの関係でもあり、
教師と生徒の関係でもあり、
もしかしたらあらゆる関係性において同じなのかもしれない。
複雑な社会を円滑に進めるための方法は、
私たちに大切な何かを忘れさせたのかもしれない。

だからこそ暗黙のルールが通用しない相手には、
私たちを引き付ける何かがある。
違和感と同時に覚える好奇心は、
困難だけでなく、ささやかな喜びを思い出させてくれる。

(きんむぎ君)

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ぼくたちのムッシュ・ラザール
Monsieur Lazhar
(2011年 カナダ 95分 シネスコ・SRD) 2012年12月15日から12月21日まで上映
■監督・脚本 フィリップ・ファラルドー
■原作・出演 エヴリン・ド・ラ・シュヌリエール
■製作 リュック・デリー/キム・マックルー
■撮影 ロナルド・プラント
■音楽 マルタン・レオン

■出演 フェラグ/ソフィー・ネリッセ/エミリアン・ネロン/ブリジット・プパール/ダニエル・プルール

■アカデミー賞外国語映画賞ノミネート/トロント国際映画祭最優秀カナダ映画賞/ジニー賞最多6部門制覇/ロカルノ国際映画祭観客賞・VARIETYピアッツァ・グランデ賞/ロッテルダム国際映画祭観客賞

いちばん大事なことは、
教科書には載ってない。

picモントリオールの小学校。 ある冬の朝、教室で担任の女教師が首を吊って死んでいた。 生徒たちはショックを受け、学校側は生徒たちの心のケア、後任探しの対応に追われる。 そんな中、アルジェリア移民の中年男バシール・ラザールが代用教員として採用されることになった。カリスマ性があるワケでもなく、朴訥で、少々野暮ったいラザール先生は、授業内容も時代遅れ。しかし、いつも真摯に向き合ってくれる彼に、生徒たちは心を開き始める。一方で、ラザール自身もまた、愛する人々の「死」を乗り越えなければならない立場にあることが明らかになり…。

アカデミー賞外国映画賞ノミネート!

picスイス ロカルノ映画祭でプレミア上映され、熱狂的に受け入れられ、観客賞を受賞した本作。その後も、本国トロント映画祭でカナダ映画賞を受賞、ロッテルダム映画祭での観客賞など快進撃を続け、遂にはアカデミー賞外国語映画賞にノミネート。カナダのアカデミー賞といわれるジニー賞でも、作品賞はじめ主要6部門を独占した、名実ともに、2011年のカナダ映画を代表する一本だ。

監督は前作がカンヌ映画祭ジュニア部門でグランプリを獲得したフィリップ・ファラルドー。本作で魅せる、人間に向ける温かな視線と、登場人物が内に秘める激しさを掬い取る手腕は、フランスの名匠フランソワ・トリュフォーを彷彿とさせる。 ラザールに扮するアルジェリア出身のフェラグは、自身も亡命経験を持つがゆえ、複雑な背景を持つ謎めいたキャラクターに深みを与えることに成功した。また、二人の子役の瑞々しい演技も物語を牽引する。人は悲しみをどうやって乗り越えてゆけばよいのか? 冬から春、そして夏へ。ラザール先生の授業が終わるとき、観る者はこころ癒され、優しさに包み込まれることだろう。


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屋根裏部屋のマリアたち
LES FEMMES DU 6EME ETAGE
(2010年 フランス 106分 ビスタ・SRD) 2012年12月15日から12月21日まで上映
■監督・脚本 フィリップ・ル・ゲイ
■脚本 ジェローム・トネール
■撮影 ジャン=クロード・ラリュー
■音楽 ホルヘ・アリアガータ

■出演 ファブリス・ルキーニ/サンドリーヌ・キベルラン/ナタリア・ベルベケ/カルメン・マウラ/コンチャ・ガラン

■セザール賞助演女優賞受賞(カルメン・マウラ)

本当の幸せ? それはメイドたちにお聞きになって

pic1962年、パリ。株式仲介人のジャン=ルイ・シュベールは、妻シュザンヌが雇ったスペイン人メイドのマリアを迎え入れる。彼女は、シュベール家と同じアパルトマンの屋根裏部屋で、同郷出身のメイドたちと暮らしていた。軍事政権が支配する故郷を離れ、異国で懸命に働くスペイン人メイドたちに、次第に共感と親しみを寄せるジャン=ルイは、やがて機知に富んだ美しいマリアに魅かれてゆくのだった。しかし、そんな夫の変化に無頓着なシュザンヌは、彼と顧客の未亡人との浮気を疑い、夫を部屋から追い出してしまう。こうしてその夜から、ジャン=ルイはメイドたちと同じ屋根裏で一人暮らしを始めるが、それは彼に今まで味わったことのない自由を満喫させることになる…。

人生も半ばを過ぎたフランス人資産家の運命を変えたのは、
屋根裏部屋に暮らす陽気で情熱的な
スペイン人メイドたちだった…

pic60年代のパリを活き活きと現代に甦らせたのは、フランスの俊英フィリップ・ル・ゲイ。ブルジョワ出身で、実際にスペイン人メイドと暮らしたいという彼自身の幼少期の想い出を基にしたという本作は、本国フランスで220万人を動員する大ヒットを記録、「エンタテインメントの傑作!」と絶賛を浴びた。

pic“完璧なゆで卵”にこだわる心優しき主人ジャン=ルイを演じるのは、フランスが誇る名優ファブリス・ルキーニ。妻シュザンヌには『プチ・ニコラ』のサンドリーヌ・キベルラン、メイドのマリアにはスペインの新星ナタリア・ベルベケ、そしてマリアの叔母コンセプシオンを巨匠アルモドバルのミューズ、カルメン・マウラが貫禄たっぷりに演じ、本作でセザール賞助演女優賞に輝いた。人は何歳になっても、人生をやり直すことができる。笑いと優しさで綴られたこの作品は、たった一度きりの人生を後悔なく愉しむ、その秘訣をそっと教えてくれる。



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