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チェン・カイコー

1952年生まれ。父は著名な映画監督、母なシナリオ編集者という映画一家に育つ。北京電影学院監督科を卒業後、広西映画撮影所に配属され、84年に処女長編『黄色い大地』を発表。国内では賛否両論だったが、ロカルノ映画祭銀賞を獲得して世界的な注目を浴びた。続く『大閲兵』もモントリオール国際映画祭で審査員特別賞を受賞。『さらば、わが愛/覇王別姫』が中国語映画として初のカンヌ国際映画祭でパルムドールに輝くなど、高く評価され、一躍著名監督となった。

フィルモグラフィ

・黄色い大地(1984)
・大閲兵(1985)
・子供たちの王様(1987)
・人生は琴の弦のように(1991)
さらば、わが愛/覇王別姫(1993)
・花の影(1996)
・始皇帝暗殺(1998)
・キリング・ミー・ソフトリー(2001)
・10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス(2002)
北京ヴァイオリン(2002)
・PROMISE プロミス(2005)
・それぞれのシネマ 〜カンヌ国際映画祭60回記念製作映画〜(2007)
花の生涯〜梅蘭芳〜(2008)

待っていました陳凱歌(チェン・カイコー)監督!!今週の早稲田松竹は『京劇×女形』の「あの」2作品を一気に観て頂ける本当に贅沢な二本立て!!

中国映画の芸術性を世界的に認められ、大躍進のきっかけともなった
カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作『さらば、わが愛/覇王別姫』
そしてそれから15年、再び陳凱歌監督が京劇を題材にした
現在までの最新作である『花の生涯〜梅蘭芳〜』

2008年東京国際映画祭でロシアの巨匠ニキータ・ミハルコフ監督と共に
黒澤明賞が贈られた陳凱歌監督。
巨匠の名をさらに不動のものとした彼が徹底的にこだわり、
妥協を許さずに生まれた新旧の傑作です。

二作品とも、人間のドロドロとした真実の姿が描かれているのに、美しい。
人生の、運命の、時代の…と、陳凱歌監督の作品を語ると
つい話が大きくなってしまう気がします。
しかし何故でしょう。
この二作品とも描いているのは舞台の表と裏ばかりなのです。

「京劇」の大きさが「中国」を。
「女形俳優」の姿が「人間」を繊細に描き出してしまう。
その骨太で繊細なタッチこそが大陸、大河が育んできた花の美しさなのかもしれない。

見逃していた方は、是非ご来館下さい。

さらば、わが愛/覇王別姫

pic覇王別姫
(1993年 香港 172分 ビスタ/SR)

2010年1月9日〜1月15日まで上映
 

■監督・製作 チェン・カイコー
■原作・脚本 リー・ピクワー
■出演 レスリー・チャン/チャン・フォンイー/コン・リー/グォ・ヨウ

■カンヌ国際映画祭パルム・ドールほか多数受賞

第五世代(この呼び方も彼らが現れてから成された分類である)と言われる、北京電影学院出身者が大半を成す世代(陳凱歌監督デビュー作『黄色い大地』の撮影監督は『HERO』『LOVERS』の監督でもある張芸謀(チャン・イーモウ)であることもよく知られている)。本作『さらば、わが愛/覇王別姫』は、それまでの中国映画とは全く異なったストーリーテリングの方法を持ち、伝統的なものを打ち破ってきた彼らの記念碑的な作品。

京劇『覇王別姫』を劇中劇として作品に組み込み、文化大革命時代に翻弄される京劇役者たちの生涯と重ね合わせた本作に溢れるポエジーは、多くの映画を観ていても簡単に巡り合えるものではありません。

もう亡くなってしまったので今の若い映画ファンの方はもしかしたら張國榮(レスリー・チャン)の姿をスクリーンで観たことがないかもしれませんが、彼の語りつくせないほどの魅力を堪能できるのもこの映画の宝です。

さらにこの映画について語る時に「裏切り」について考えないわけにはいきません。中国の歴史の厚さは個人の生涯と比べることもできませんが、この映画では まさにその問題の狭間に立つ人間の姿を描いていると言えましょう。

親愛なるものへの愛情もさることながら、支え続けるものの愛情、一年一月一日一秒離れたくないと語るほどの恋慕。

大きな時間の流れの中で失われるものは非常に多いけれど、日本で言えば明治維新や太平洋戦争敗戦のように、信じられていたものが大きく舵の向きを変えて、なかったことのようにされてしまう。

我々は、時代に巻き込まれていく人間について、今も多くを語るこの映画のスクリーンの前で、歴史が食い破られてもなお残される人間の運命的な姿を見つめ続ける方法を未だ得ないままに、一体いつまで「知らない」とつぶやくのだろうか?このページのトップへ

pic 梅蘭芳
(2008年 中国 147分 シネスコ/SRD)

2010年1月9日〜1月15日まで上映
 

■監督 チェン・カイコー
■脚本 ゲリン・ヤン/チェン・クオフー/チャン・チアルー
■原案 メイ・シアオウー
■出演 レオン・ライ/チャン・ツィイー/スン・ホウレイ/チェン・ホン/ワン・シュエチー/イン・ター/ユィ・シャオチュン/安藤政信/六平直政

梅蘭芳(メイランファン)。実在の女形京劇俳優としての彼の名声は非常に高く、京劇『覇王別姫』を創作・上演したのも彼。京劇の海外公演を初めて成功させ、チャップリンやエイゼンシュタイン、ブレヒトなどの演劇人からも賛美を得たと言われてます。

pic中国の心とも言われる京劇のトップスター「京劇王」として、普通の人生を過ごすわけにはいかない苦悩。日本軍占領下においても、生涯一度の恋においても、梅蘭芳は京劇役者であり続けることを選んだ。

演じることの孤独の深さが私たちの身まで届く時、彼の生涯が役者ではない私たちの人生とも共鳴し始める。たった一人で舞台に立たなければいけない彼の向かいあっているものは、観客だったでしょうか?はたまた京劇の歴史?中国の?

わたしたちは彼を助ける力も、止める力も持たない。なぜなら彼が向かい合っていたものはそれらを包括する彼の人生だけだったのだから。

picなぜそんな人生を放棄せずに役者であり続けるのか?運命と闘い続けるには、演じることしかできないということが彼を「役者」にし続けたのだから、わたしたちは彼の人生を導いたものを見間違えるはずがありません。舞台に向けて一歩踏み出したその姿を目撃した我々は、きっと深い誇りと勇気に包まれるでしょう。

スターだからではない。それが、梅蘭芳なのだ。

(ぽっけ)



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