生きていれば、問題にぶつかることは山ほどある。
お金、家族、恋人、友人、仕事、健康、法律、詐欺、泥棒、地震、雷、火事、オヤジ(!)
全てが大津波のように押し寄せて、
人生がぶち壊されてしまうことだって、ある。
どんなに努力しても、どんなに才能があっても、
チャンスが平等に巡ってくるわけじゃない。
運良く幸せを掴んでも、それが長続きする保障なんてどこにもない。
だったら、挑戦なんてやめとく?
夢見ることは、素敵なこと。
それを疑う気持ちなんてなかったはずなのに。
いつのまにか、“諦め”“妥協”という知恵を身につけて、
私たちは大人になる。
自分の好きなように生きるということ
自分の夢を貫き、
愛するものを守るということは、時に辛く、時に苦しい。
自分が傷つくばかりか、周囲の人間を傷つけるかもしれない。
幸せになれるかどうかなんて誰にもわからないし、
気が遠くなるような困難が待ち受けているかもしれない。
だが、彼らは決して自分を曲げなかった。
後退せず、前に進み続けた。
そこに、夢を諦めなかったことへの後悔など存在しない。
彼らから感じ取れるもの、それは“勇気”であり、“誇り”でもあり、
信じるものへの“愛”でもある。
彼らにとって、それは音楽。
そして音楽とは、人生そのものだ。
決して夢を諦めない彼らの気高き姿と、
共鳴する熱いビート<鼓動>。
誰もが胸を打たれる、魂の2本を、ここに!
パイレーツ・ロック
THE BOAT THAT ROCKED
(2009年 イギリス 135分 シネスコ/SRD )
2010年2月20日から2月26日まで上映
■監督・脚本 リチャード・カーティス
■出演 フィリップ・シーモア・ホフマン/ビル・ナイ/リス・エヴァンス/ウィル・アダムズデイル/トム・ブルック/リス・ダービー/ニック・フロスト/トム・スターリッジ/ケネス・ブラナー
1966年、ブリティッシュ・ロックが世界中を席巻していた時代。まだ民法のラジオ局は存在しておらず、イギリスのBBCラジオが流すポピュラー・ミュージックの量は1日45分だけと制限されていた。“もっと聴きたい、もっと聴かせたい”…そんな時代のニーズから、公海沖に停泊した船上から電波を飛ばして放送する海賊ラジオ局が登場!その存在なくして、世界中を躍らせたブリティッシュ・ビートの躍進、ひいては、その後40年以上にわたるロックの歴史はありえなかった。
そんな実際にあった海賊ラジオ局の船の上が、この物語の舞台。高校を退学になった18歳のカールは、更生を望む母親の差し金でこの船に送り込まれる。ところがそこは、型破りな8人のDJたちと乗組員たちが大好きなレコードに囲まれ、自由を謳歌する楽園だった。
『ラブ・アクチュアリー』のヒットメイカー、リチャード・カーティス監督はこう語っている。「僕と同世代の人たちはみんな、同じような思い出を持っているんだ。夜ベッドに入ると、枕の下のトランジスタ・ラジオのスイッチを入れて、こっそり音楽を聴いていた」
人々に愛され、黄金時代を築き上げた海賊たち。インターネットで検索すれば、未だ彼らの情報が山のように手に入る。パイレーツ・ロックのモデルであり、海賊放送の先駆けとなった「レイディオ・キャロライン」や、黄金時代を築き上げた「レイディオ・ロンドン」に至っては、オフィシャルサイトまで存在する(ちなみに、欲しい人はTシャツも買える!)。そう、民間放送が許可された今、彼らは今もラジオを続けているのだ。この映画を見て、「懐かしい」と感じた人も、「こんな時代があったなんて!」と感じた人も、ようこそ、輝けるロックの世界へ!音楽と彼らの魂は、絶対に死なない。
アンヴィル!夢を諦めきれない男たち
ANVIL! THE STORY OF ANVIL
(2009年 アメリカ 81分 ビスタ/SRD )
2010年2月20日から2月26日まで上映
■監督 サーシャ・ガヴァシ
■編集 ジェフ・レンフロー/アンドリュー・ディックラー
■音楽監修 デイナ・サノ
■出演 スティーヴ・“リップス”・クドロー(アンヴィル)/ロブ・ライナー(アンヴィル)/ラーズ・ウルリッヒ(メタリカ)/レミー(モーターヘッド)/スラッシュ(ガンズ&ローゼズ)/トム・アラヤ(スレイヤー)/スコット・イアン(アンスラックス)
80年代に絶大な影響を与えたものの、人々から忘れ去られていたバンド、アンヴィル。バンドの中心メンバー、リップスは給食の宅配員、ロブは建築作業員として働いている。さ、冴えない!あまりの冴えなさに愕然とするくらい、普通のオッサンだ!こんな彼らがバリバリのメタルロッカーで、30年も夢を追い続け、しかも未だに諦めていないなんて、誰が想像できるだろうか?
そんな彼らを久しぶりに訪ねたのは、スティーブン・スピルバーグ監督『ターミナル』の脚本を手がけたサーシャ・ガヴァシ。かつて高校生の夏休みにローディーとしてツアーに同行した彼は、アンヴィルが昔と変わらずスターになることを夢見て活動を続けていることに胸を打たれ(ようするに売れていないということだが)、彼らのドキュメンタリーを制作しようと決意した。
そうして公開されるや否や、凄まじいムーブメントが巻き起こった。世界各国の映画祭で盛大な拍手を送られ、プレミア上映にはキアヌ・リーブス、ダスティン・ホフマンといった著名人が集結するまでの騒ぎに。オジー・オズボーンや元ガンズ・アンド・ローゼスのスラッシュ、ドキュメンタリー映画監督マイケル・ムーアらも絶賛の声を寄せ、一躍社会現象となった。
カメラに収められたのは、どんな苦境に立たされても、不器用なまでに夢を持ち続け、友情を一番に考え苦境を乗り越えようとチャレンジするバンドの姿。熱い友情、熱いハート、熱い夢…。信じ、生きることの純粋さと力強さに、思わず胸が震え、目頭が熱くなり、唇がプルプル…してしまうに違いない。夢を諦めきれないすべての人に捧げる、笑いと感動に満ちた作品である。
(ザジ)