パズー
昨年、ハリウッドに革命を起こした映画が誕生しました。今週上映する『クレイジー・リッチ!』です。本作は全米で公開されるや3週連続No.1という大ヒットを記録しました。さらに『クレイジー・リッチ!』に続けて公開されたのが、もう1本の作品『search/サーチ』。インディペンデント映画の登竜門・サンダンス映画祭で最高賞に当たる観客賞を受賞し、あっという間に全米公開、1館あたりの興行成績No.1をたたき出しました。
いったいこの二作品の何が革命的だったのでしょうか?
それは、監督と主要キャストがアジア人である作品だったからです。ここ数年、ハリウッドでは人種や性別による差別の根絶が叫ばれています。事実、2017年のアカデミー賞作品賞に輝いた『ムーンライト』や、北米で史上最高の興行成績を獲得したスーパーヒーロー映画『ブラックパンサー』など、黒人の監督・キャストによる作品が高く評価されヒットしました。そこで次に出てきたのが、この二作品だったのです。
生粋のニューヨーカーであるアジア系アメリカ人のキャリアウーマンが、シンガポールにある彼氏の実家にいったらとんでもない大富豪で、周り中から交際を反対されるというラブコメディ『クレイジー・リッチ』。スーパーセレブな華僑の生態を描いた本作は、シンガポール出身の作家ケヴィン・クワンによるベストセラー小説が原作ですが、映画化の際、当初は主人公を白人が演じるという案があったそうです。けれど、「ホワイトウォッシング(非白人の役を白人が演じること)」と呼ばれるこの申し出を、作者は一蹴しました。
『search/サーチ』は、IT企業で働くアジア人が多く住むサンノゼを舞台に、突然失踪した娘を探す父の必死の捜索をなんと全編PC画面上で描いたサスペンススリラーです。この父娘は韓国系ですが、本作に至っては、アジア人であることはむしろ全く協調されていません。サンノゼが舞台だから主役がアジア人なのは当たり前で、特にその理由に触れることもないのです。SNSや監視カメラ、ネットニュースなどを駆使し、本当にPC画面上だけで物語が進んでいく異例の展開に、正直そんなこと全く気にならないはずです。
「アジア人映画は当たらない」という根拠のないジンクスを見事に覆した両作品。アメリカ映画史的に重要な映画であることは間違いないのですが、何よりどちらもとてもよくできたエンターテインメントになっています! 世界中の誰が観たって面白い、これが実際のヒットの理由なのではないでしょうか。
こと当該国でもある日本では、「ホワイトウォッシング」はいまでもあまり問題になっていないような気がしますが(それが今後問題になりそうですが)、今週は、変わりつつあるヒット作のセオリーを現在進行形で感じることができる、「いま観るべき」二本立てをお楽しみください。
クレイジー・リッチ!
Crazy Rich Asians
■監督 ジョン・M・チュウ
■原作 ケビン・クワン
■脚本 ピーター・チアレッリ/アデル・リム
■撮影 バーニャ・ツァーンユル
■音楽 ブライアン・タイラー
■出演 コンスタンス・ウー/ヘンリー・ゴールディング/ミシェル・ヨー/オークワフィナ/ジェンマ・チャン/リサ・ルー
■2018年ゴールデン・グローブ賞作品賞・女優賞ノミネート/放送映画批評家協会賞最優秀コメディ映画賞受賞
©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT
【2019年2月23日から3月1日まで上映】
私の彼はスーパーセレブ、愛してるだけじゃダメみたい。
生粋のニューヨーカー・レイチェルは、長年の恋人ニックが親友の結婚式に出席するというので、一緒にシンガポールへ向かう。初めてのアジア旅行に胸を躍らせながらも、それまでニックが家族の話を避けているように感じていたレイチェルは、彼の家族に会うことにとても緊張していた。出発当日、空港で案内された先はファーストクラス…なんとニックは、かの国でもとりわけ裕福な一族の御曹司であるだけでなく、社交界の女性たちから超人気の独身男のひとりでもあったのだ。
そんなニックの恋人として現れたレイチェルには、嫉妬深いお嬢さまたちからのキツーい視線が突き刺さる。さらに悪いことに、ふたりの交際をよく思わないニックの母親が仲を裂こうと画策し始める。そんななか明らかになってくるのは、お金で愛は買えないが、お金の存在は物事を断然複雑にするということだった…。
全米3週連続1位! ハリウッド映画の歴史を変えた、映画版<アジアNo.1バチェラー>ショー!!
世界17か国で出版され全世界の女性の心を掴んだ、ケビン・クワンによるベストセラーが待望の映画化! 舞台となるのは世界の富裕層が住む国シンガポール。恋人がスーパーリッチな一族の御曹司だと知った主人公は、ある日突然セレブな社交界へ足を踏み入れる。そこで待ち受けていたのは、「愛してる」だけでは乗り越えられない障害の数々。困難に立ち向かう彼女の姿は、現代を生きる女性にとって新たなミューズとなること間違いなし! “本当の幸せ”を見つけるために奮闘する世界中の女性たちへ贈るラブコメディが誕生した。
ハリウッドで25年ぶりとなるオール・アジアン・キャストで作られた本作は、全米で公開されるや3週連続1位を記録。社会現象を巻き起こし、ゴールデングローブ賞にもノミネート。ハリウッド映画の歴史を変えた一作と呼べる大成功を収めた。
search/サーチ
Searching
■監督・脚本 アニーシュ・チャガンティ
■製作・脚本 セブ・オハニアン
■撮影 ホアン・セバスティアン・バロン
■編集 ニック・ジョンソン/ウィル・メリック
■音楽 トリン・ボローデール
■出演 ジョン・チョー/ミシェル・ラー/ジョセフ・リー/デブラ・メッシング
■2018年サンダンス国際映画祭観客賞受賞
Movie Artwork © 2018 Columbia TriStar Marketing Group, Inc. All Rights Reserved.
【2019年2月23日から3月1日まで上映】
娘を検索する―はじめて知る闇
忽然と姿を消した16歳の女子高生マーゴット。行方不明事件として捜査が始まる。家出なのか、誘拐なのかわからないまま 37 時間が経過。娘の無事を信じる父デビッドは、彼女のPCにログインしSNSにアクセスを試みる。インスタグラム、フェイスブック、ツイッター…。そこに映し出されたのは、いつも明るく活発だったはずのマーゴットとはまるで別人の、自分の知らない娘の姿があった。
サンダンス映画祭観客賞受賞! 全編PC画面の映像で展開する異色のサスペンス・スリラー!
2018年のサンダンス映画祭で大評判を呼び、見事観客賞を受賞した『search/サーチ』は、なんと100%全編、PCの画面だけで物語が展開していく。この斬新なアイデアを形にしたのは、Google社のプロジェクトで全編グーグル・グラスのみで撮影した短編を制作し、映画の未来をリードする気鋭の才能アニーシュ・チャガンティだ。初長編監督作ながら、過去に例のないまったく斬新な映像体験を生み、ハリウッドでも注目の的となっている。
PCを駆使して行方不明の娘を探すデビッドを演じるのは、『スター・トレック』シリーズのスールー役でおなじみの、ジョン・チョー。そして捜査の指揮をとるヴィック捜査官を、8年にもわたり人気を誇ったTVドラマ「ふたりは友達? ウィル&グレイス」のグレイス役で知られるデブラ・メッシングが好演する。