【2023/1/28(土)~2/3(金)】『青春群像』『8 1/2』

8 1/2
8 ½

フェデリコ・フェリーニ監督作品/1963年/イタリア/138分/DCP/ビスタ

■監督・脚本 フェデリコ・フェリーニ
■脚本 トゥリオ・ピネッリ/エンニオ・フライアーノ/ブルネッロ・ロンディ
■製作 アンジェロ・リッツォーリ
■撮影 ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
■音楽 ニーノ・ロータ

■出演 マルチェロ・マストロヤンニ/アヌーク・エーメ/クラウディア・カルディナーレ/サンドラ・ミーロ/バーバラ・スティール

■アカデミー賞外国語映画賞・衣装デザイン賞(白黒)/NY批評家協会賞外国映画賞受賞

©MEDIATRADE 1963

【2023/1/28(土)~2/3(金)上映】

人生は祭りだ! 巨匠フェリーニの最高傑作

映画監督のグイド・アンセルミは温泉治療のためホテルに滞在している。彼はそこで新作の準備をしながら、過去の思い出に迷い込み、不安やヴィジョンに囚われ様々な想像の世界へと降りて行き、また現実の世界にたち帰って来る。グイドは湯治場で気持ちを落ち着かせようとするが、情婦がやってきて身辺をかき乱した上に、妻も来るという知らせをうけて仕事は一向に進まない。

やがて業を煮やしたプロデューサーたちがやって来る。彼らの前ではグイドも一介の使用人にすぎず、何ということもなく彼らの意向に押し切られていき、不安はさらに募る。グイドが創作に行き詰り、ついに新作の中止を決意すると、超能力を持つ魔術師が「待ってくれ」とあらわれて――。

天才が天衣無縫に作った作品が、絵画でもなく、彫刻でもなく、音楽でもなく、詩でもなければ物語でもなく、たまたま映画だった奇蹟的な傑作。

『道』や『カリビアの夜』のリアリズムの世界から、夢と現実が溶け合う幻想的な世界へ。フェリーニの大きな飛躍となった記念碑的作品である。奇妙な題名(はっかにぶんのいち、と読む)は、これまでのフェリーニの作品数が短編を半分に数えて8と1/2になる意味。それだけに自伝的要素が濃い。

映画作りの困難、妻と愛人との板ばさみといったなまなましい現実と、子供時代の記憶、カーニヴァルやサーカスのようににぎやかな夢の世界が波のように打ち寄せる。温泉場に夢のようにあらわれる美神クラウディア・カルディナーレや、少年時代の思い出のなかの太った女サラギーナに、フェリーニの女性讃歌があらわれている。猥雑な大人の現実を生きながら、フェリーニには、それだからこそイノセンスへの強い思いがあった。失われた無垢へのフェリーニの強い想いが、現代人の心をいまも揺さぶる。映画監督のみならず、世界中のあらゆるジャンルのクリエイターたちから敬愛され、今もなお多大な影響を与え続ける巨匠、フェデリコ・フェリーニの最高傑作!

青春群像
I Vitelloni

フェデリコ・フェリーニ監督作品/1953年/イタリア・フランス/107分/DCP/スタンダード

■監督・脚本 フェデリコ・フェリーニ
■脚本 エンニオ・フライアーノ/トゥリオ・ピネッリ
■撮影 オテッロ・マルテッリ/ルチアーノ・トラザッティ/カルロ・カルリーニ
■音楽 ニーノ・ロータ

■出演 フランコ・ファブリッツィ/アルベルト・ソルディ/レオノーラ・ルフォ/リカルド・フェリーニ/ジャン・ブロシャール

■第14回ヴェネチア国際映画祭 サン・マルコ銀獅子賞受賞

【2023/1/28(土)~2/3(金)上映】

誰の胸にもある絶望の滲む青春時代の郷愁——

北イタリアの小さな港町。女友達を妊娠させてしまい結婚するはめになったファウスト、女中にうつつを抜かす劇作家志望の青年レオポルド、姉から小遣いをせびり取っては憂さを晴らすアルベルト、歌だけが取り柄のリカルド、そしてただ一人現状に満足することのないモラルド。相変わらず無為な日常を続ける彼らは遅くまで遊び歩いて時間をつぶしていた。

皆で海岸へ出かけた時、アルベルトは姉が縁を切ったはずの妻子ある男と会っているのに行き会った。そのことを姉に問い詰めたが、姉は心を閉ざすばかり。ファウストは義父の紹介で骨董品店に勤め始めるが、妻と出かけた映画館で他の女性に目をつけ妻を一人置き去りにしたり、女好きは相変わらず。町にカーニヴァルがやってきた夜、ファウストは店の主人ジュリアの見違えるような姿に惹かれる。そして夜明け頃、ダンスホールから戻ってきたアルベルトは、意を決した姉が男の待つ車へ乗りこんでいくのを見たのだった――。

手に入ったばかりの栄光は全て夢と消える フェリーニが故郷を舞台に描く自伝的作品

30歳に手がとどこうかというのにいまだに無為徒食、モラトリアムを地でいくような五人の青年たちの姿を描いたフェリーニの初期の作品。登場する青年たちは皆、元気にあふれているものの人生の目的もはっきりせず、ただやたらにエネルギーを浪費するだけ。そんな生活ぶり(原題は<のらくら者たち>)に、そこはかとない不満や不安を秘めながら、ただ美しいばかりの青春の姿とは一味違った青春の真実をにじませる。

舞台となっている都市がフェリーニの故郷リミニをモデルにしていること、フェリーニの実弟リカルド・フェリーニがリカルド役で登場していることなどもあり、自他ともに認めるフェリーニの自伝的映画である。青春の郷愁をくすぐる感傷的な佳作。