【2022/10/8(土)~10/14(金)】『ドライブ・マイ・カー』/『親密さ』/『適切な距離』+『美しい術』/『PASSION』

ミ・ナミ

今週の早稲田松竹は、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』『親密さ』『PASSION』と、濱口監督とタッグを組んで『ドライブ・マイ・カー』の脚本を完成させた大江崇允監督の『美しい術』『適切な距離』を上映いたします。

舞台俳優であり演出家の男が最愛の妻を失い、心に虚無と葛藤を抱えてなおも前を向こうとする『ドライブ・マイ・カー』と、舞台作品の上演を控えた男女の関係性が少しずつ変化していく『親密さ』は、ともに3時間を超える長尺の作品です。そのランタイムにひるんでしまうかもしれませんが、観終わった瞬間、長い時間を経たからこその幸福感に満ち足りた思いがするのではないでしょうか。人と人との関係は、寄り道をしなければ気づけないことがたくさんある。そんな示唆を与えてくれたのが、この二作品だったと私は思っています。

そして、今回濱口監督の作品とともに上映する大江崇允監督の二本は、いずれも『ドライブ・マイ・カー』へつながる視点を持ち合わせています。特に演劇を映画に取り込んだ『適切な距離』は、その舞台裏を見せることで、演劇の緊張感を観客と共有しています。両監督の作品を合わせて観ることによって、より深く作品の世界観に触れられるのではないでしょうか。

『ドライブ・マイ・カー』がカンヌ国際映画祭で脚本賞に輝いたとき、受賞スピーチで濱口監督は大江監督をこう評していました。

「大江さんと僕の関係は奇妙なもので、僕にひたすら書かせるタイプの脚本家。いつも読みながら、“本当に素晴らしい。このままやりなさい” と言ってくれました。この作品は、3時間近くあり壮大な物語。彼がずっと励まし続けてくれたから、この物語を最後まで映画として書き切ることができたと思っています。」

今週の上映は、現代日本映画を牽引する盟友同士の傑作選となります。ぜひ、お見逃しなく。

ドライブ・マイ・カー
Drive my car

濱口竜介監督作品/2021年/日本/179分/DCP/PG12/ビスタ

■監督 濱口竜介
■原作 村上春樹「ドライブ・マイ・カー」
(短編小説集「女のいない男たち」所収/文藝文庫刊)
■脚本 濱口竜介/大江崇允
■製作 山本晃久
■撮影 四宮秀俊
■照明 高井大樹
■編集 山崎梓
■音楽 石橋英子

■出演 西島秀俊/三浦透子/岡田将生/霧島れいか/パク・ユリム/ジン・デヨン/ソニア・ユアン/アン・フィテ/ペリー・ディゾン/阿部聡子

■第94回アカデミー賞国際長編映画賞受賞、作品賞・監督賞・脚色賞ノミネート/第74回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞/第45回日本アカデミー賞最優秀作品賞ほか主要8部門受賞 ほか多数受賞・ノミネート

★本作品は1本立て上映です。
☟入場料金
大人1300円/その他各種割引あり/ラスト1本割なし

©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

【2022年10月8日から10月14日まで上映】

妻との記憶が刻まれた車。聴けなかった秘密。孤独な二人が辿りつく場所――。

舞台俳優であり演出家の家福(かふく)は、愛する妻の音(おと)と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう――。2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。さらに、かつて音から紹介された俳優・高槻の姿をオーディションで見つけるが…。

喪失感と“打ち明けられることのなかった秘密”に苛まれてきた家福。みさきと過ごし、お互いの過去を明かすなかで、家福はそれまで目を背けてきたあることに気づかされていく。人を愛する痛みと尊さ、信じることの難しさと強さ、生きることの苦しさと美しさ。最愛の妻を失った男が葛藤の果てに辿りつく先とは――。

原作:村上春樹 × 監督:濱口竜介 誰しもの人生に寄り添う、新たなる傑作

いま世界が最も熱い注目を寄せる濱口竜介監督。待望の最新長編作は、数々のベストセラーを生み出してきた作家・村上春樹による、珠玉の短編小説「ドライブ・マイ・カー」の映画化だった。この作品に惚れ込んだ濱口は、原作の精神を受け継ぎながらも、「ワーニャ伯父さん」、「ゴドーを待ちながら」という時代を超えて愛されてきた演劇要素を大胆に取り入れ、ストーリーと映画内演劇が重層的に呼応しあう驚異的な物語を紡ぎだした。

主人公の家福を演じるのは西島秀俊。行き場のない喪失を抱えながらも、希望へと一歩を踏み出していく心の機微を見事に体現した。ドライバーのみさきには、多彩な才能で注目を集める三浦透子。物語を大きく動かすキーパーソンの高槻に岡田将生。家福の妻・音を霧島れいかが演じるなど、実力派俳優陣が集結。また、韓国・台湾などからオーディションで選ばれた海外キャストも出演。日本人キャストとの見事なアンサンブルを見せ、劇中の多言語劇を中心に9つの言語を交えて展開する、誰も観たことのない唯一無二の物語を彩る。

本作は第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞など4冠を受賞。また、第94回米アカデミー賞では、国際長編映画賞を受賞したほか、日本映画史上初となる作品賞や脚色賞にもノミネートされるなど、国内外の賞レースを席巻。社会的にも大きな話題を呼んだ。

親密さ
Intimacies

濱口竜介監督作品/2012年/日本/255分(途中休憩あり)/DCP/ビスタ

■監督・脚本 濱口竜介
■舞台演出 平野鈴
■撮影 北川喜雄
■編集 鈴木宏
■編集 黄永昌
■劇中歌 岡本英之

■出演 平野鈴/佐藤亮/田山幹雄/伊藤綾子/手塚加奈子/新井徹/菅井義久/香取あき

★本作品は1本立て上映です。
☟入場料金
大人1800円/学生・シニア・障がい者1500円/その他割引なし
★15分間の途中休憩が1回ございます。

© ENBUゼミナール

【2022年10月8日から10月14日まで上映】

舞台「親密さ」の上演を間近に控える令子は、同棲する恋人でもある良平と演出を手掛けていたが、稽古場や私生活で数々のハプニングに見舞われる中で、二人の関係にも変化が生じていく…。

ENBUゼミナールの映像俳優コースの修了作品としてスタートした企画。「親密さ」という演劇を作り上げていく過程をフィクションとして演じる前半と、実際の上演を記録し映画として構成した後半の二部構成で描かれる傑作青春群像劇。現実と虚構が複雑に交錯し続け、虚実の彼岸にあるリアリティーの核心が胸を揺さぶる。

美しい術
Utsukushii sube

大江崇允監督/2009年/日本/90分/DCP/ビスタ

■監督・脚本 大江崇允
■撮影監督 三浦大輔
■撮影 櫻井伸嘉

■出演 土田愛恵/森衣里/戸田彬弘

★本作品は『適切な距離』との2本立て上映です。
☟入場料金
大人1300円/その他各種割引あり

©CO2事務局

【2022年10月8日から10月10日まで上映】

いつも不倫をしている無職の雨宮と、仕事で叱られてばかりいる公務員の太田。ある日、雨宮は太田の同僚である森谷と出会う。森谷が気になる雨宮だったが、森谷は太田が気になっていた。2009年に大阪シネ・ヌーヴォで自主公開したデビュー作。

適切な距離
Tekisetsu na kyori

大江崇允監督/2011年/日本/92分/DCP/ビスタ

■監督 大江崇允
■脚本 菊池開人/大江崇允
■撮影監督 三浦大輔
■撮影 櫻井伸嘉
■録音 竹内遊
■美術 寄川ゆかり
■音楽 石塚玲依

■出演 内村遥/辰寿広美/時光陸/佐々木麻由子/大江雅子/堀川重人

★本作品は『美しい術』との2本立て上映です。
☟入場料金
大人1300円/その他各種割引あり
★本作品のみをご鑑賞の場合は、ラスト1本割800円でご覧になれます。

©CO2事務局

【2022年10月8日から10月10日まで上映】

断絶した親子関係。生まれなかった弟と母の幸せな生活。久々のコミュニケーションは、母の嘘の日記だった。

会話のない親子が“嘘の日記”を使ってコミュニケーションをとる姿を通して、嘘の中に埋もれている現実世界で生きる上での真理を巧みに描き出す。複雑な構成の作品だが、三浦大輔の撮影も高く評価され他の作品を圧倒し、第7回CO2では審査員全員が一致して大賞を受賞。また男優賞に主演の内村遥も輝いた。

【特別モーニングショー】PASSION
【Morning show】Passion

濱口竜介監督作品/2008年/日本/115分/DCP/ビスタ

■監督・脚本 濱口竜介
■撮影 湯澤祐一
■照明 佐々木靖之
■録音 草刈悠子
■編集 山本良子

■出演 河井青葉/岡本竜汰/占部房子/岡部尚/渋川清彦

★本作品は特別モーニングショー上映です。
☟入場料金
一律1000円/割引なし

©︎東京藝術大学大学院映像研究科

【2022年10月11日から10月14日まで上映】

結婚間近の果歩と智也を祝う席上、智也の過去の浮気が発覚し…。男女5人が揺れ動く一夜を描いた群像劇。渋川清彦、河井青葉、占部房子と、『偶然と想像』や濱口作品の常連になる俳優たちが結集している。第56回サン・セバスチャン国際映画祭、第9回東京フィルメックスへ出品され映画作家・濱口竜介が世界に発見されるきっかけとなった初期代表作。