【2022/2/19(土)~2/25(金)】『アナザーラウンド』『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』

ジャック

難聴になってしまったドラマーを描く『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』とアルコールの力を借りて冴えない日常を変えようとする教師たちを描く『アナザーラウンド』。どちらの映画でも人生の岐路に立たされる人たちが登場します。突然何かを失くしてしまったり、失くしてしまったものを取り戻そうとしたりするためにもがく彼らを、冷静かつどこか温かい視線でとらえた二つの映画。今週は” 新しい一歩を踏み出すために”と題して二本立てで上映致します。

映画の中の彼らと同じように、心のどこかに湧き上がる満ち足りなさを埋めるため、私たちは様々なものの助けを借りています。単純な物だったり、人との関係だったり、もしかしたら形のない抽象的なものだったりするかもしれません。それは自分の人生に力添えしてくれるものでもあり、単に「依存」として捉えることもできます。

この二つの映画に共通しているのは、その心の拠り所との関係性に対して、是非を与えていないところだと思います。淡々と描かれる物語を通し映し出されるそれぞれの登場人物には、まだこれから先がある、ここからがスタートだという力強さを感じます。どのように自分の人生をとらえ、受け入れていくのか。どちらの映画のラストシーンも、迷いながらも生きている私たちの人生に対しての、ささやかな後押しとなっているのではないでしょうか。

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~
Sound of Metal

ダリウス・マーダー監督作品/2019年/アメリカ/120分/DCP/シネスコ

■監督・脚本 ダリウス・マーダー
■原案 デレク・シアンフランス
■撮影 ダニエル・ブーケ
■編集 ミッケル・E・G・ニルソン
■音楽 ニコラス・ベッカー/エイブラハム・マーダー

■出演 リズ・アーメッド/オリヴィア・クック/ポール・レイシー/マチュー・アマルリック/ローレン・ リドロフ

■2021年アカデミー賞音響賞・編集賞受賞・作品賞・主演男優賞・助演男優賞・脚本賞ノミネート/ゴールデン・グローブ賞男優賞ノミネート/英国アカデミー賞編集賞・音響賞受賞・主演男優賞・助演男優賞ノミネート ほか多数受賞・ノミネート

©️2020 Sound Metal, LLC. All Rights Reserved.

★本作品の劇場公開する上映素材はバリアフリー字幕となります。
映画制作者と監督の意思により、本作のメッセージ性に配慮して誰もが映画館での鑑賞をお楽しみいただくために、全世界で【バリアフリー】字幕での劇場公開となっております。ご了承ください。
詳細はこちらをご覧ください。 https://www.culture-ville.jp/somsubtitles

【2022年2月19日から2月25日まで上映】

彼が耳にしたのは「喪失」か「希望」か

突如難聴になったドラマーのルーベンは、一緒にバンドを組む恋人ルーに難聴者のコミュニティに連れてい かれる。難聴であることをハンディとして捉えていないコミュニティの人々と過ごしながらも、その現実を受 け入れることの難しさに直面するルーベンは、自分の人生を前に進めるために、ある決断をする…。

映画だからこそ体験できる、他人の体験・・・これは究極の擬似体験映画

日常あたりまえに聞こえている”音”、それが突然、聞こえなくなる…。突如難聴に陥るメタルバンドのドラマーの主人公ルーベンが直面する状態を、観客がまるで彼になったかのごとく味わえる本作。2020年アカデミー賞では作品賞・主演男優賞などの主要6部門にノミネートされ、音響賞・編集賞の2部門を受賞した。監督はこれが劇映画デビュー作のダリウス・マーダー。『ゼロ・グラビティ 』『メッセージ』を手がけたニコラス・ベッカーによるサウンド・デザインは絶賛されている。

主演は『ナイト・クローラー』で脚光を浴び、『ジェイソン・ボーン』『ヴェノム』などの人気作への出演が続いているリズ・アーメッド。本作ではイスラム教徒として史上初のアカデミー賞主演男優賞にノミネートに輝いた。また、無名に近いながらキャスティングされたポール・レイシーの演技は全米批評家協会賞をはじめ数多くの映画賞で最優秀助演男優賞を受賞し高い評価を得た。そのほか、『レディ・プレイヤー1』のオリヴィア・クック、『さすらいの女神たち』『007/慰めの報酬』のマチュー・アマルリック、『エターナルズ』のローレン・リドルフが脇を固める。

アナザーラウンド
Another Round

トマス・ヴィンターベア 監督作品/2020年/デンマーク・スウェーデン・オランダ/117分/DCP/PG12/ビスタ

■監督 トマス・ヴィンターベア
■脚本 トマス・ヴィンターベア/トビアス・リンホルム
■撮影 シュトゥルラ・ブラント・グロヴレン
■編集 アンネ・オーステルード/ヤヌス・ビレスコフ=ヤンセン

■出演 マッツ・ミケルセン/トマス・ボー・ラーセン/マグナス・ミラン/ラース・ランゼ/マリア・ボネヴィー/ヘレン・ラインハルト・ノイマン/スーセ・ウォルド

■2021年アカデミー賞国際長編映画賞受賞・監督賞ノミネート/ヨーロッパ映画賞4冠/デンマーク・アカデミー賞5冠/2020年カンヌ国際映画祭正式出品 ほか多数受賞・ノミネート

©2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

【2022年2月19日から2月25日まで上映】

人生に祝杯を

冴えない高校教師4人は、ノルウェー人哲学者の理論を証明するため、仕事中にある一定量の酒を飲み、常に酔った状態を保つというとんでもない実験に取り組む。すると、これまで惰性でやり過ごしていた授業も活気に満ち、生徒たちとの関係性も良好になっていく。同僚たちもゆっくりと確実に人生が良い方向に向かっていくのだが、実験が進むにつれだんだんと制御不能になり…。

主演マッツ・ミケルセン×監督トマス・ヴィンターベアで贈る、ビターでユーモラスな人生讃歌

第93回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞し、世界中で数多の映画賞を総なめにした本作は、ノルウェー人哲学者のフィン・スコルドゥールが主張する「人間は血中アルコール濃度が0.05%足りない状態で生まれてきている」という理論からヒントを得て生まれた。嘘みたいな仮説から生まれた奇想天外なストーリーは、酒が人生に与えるビターな面も描きつつも、ユーモラスで愛すべき人生讃歌となっている。

主演は北欧の至宝マッツ・ミケルセン。監督のトマス・ヴィンターベアとは『偽りなき者』に続き2度目の再タッグが実現。同作で共演したトマス・ボー・ラーセンとラース・ランゼも再登板し、新たにコメディアンとしても活躍するマグナス・ミランが参加、デンマークを代表する名優が集まった。脚本は『偽りなき者』と同様にトビアス・リンホルムがヴィンターベア監督と共同脚本を務めるなど盤石の布陣が敷かれている。