【2019/5/18(土)~5/24(金)】『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』『バスキア、10代最後のとき』// 特別レイトショー『ザ・スリッツ:ヒア・トゥ・ビー・ハード』

ミ・ナミ

今週の早稲田松竹は、時代にその名を刻印した表現者たちを紹介するドキュメンタリーの二本立てです。

80年代のニューヨークを席巻したアーティスト、ジャン=ミシェル・バスキアの黎明期にフィーチャーした『バスキア、10代最後のとき』。バスキアを主役にした映画はこれまでにもありましたが、本作が趣を異にしているのは、彼がオーバードーズ(薬物の大量摂取)でこの世を去るまでの栄光と墜落を描いているのに対し、多感なティーンエイジャーの時期をともに過ごした人々にインタビューをすることで、ストリートの悪童の一人だったジャン=ミシェル・バスキアが“バスキア”を獲得し、躍動の季節にフィーチャーしている点です。また、時代史としての価値もある本作には、1980年代のパワフルさが作品にあふれています。

『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』が改めて気づかせてくれるのは、ヴィヴィアンにとってエレガンスとは、表面的な「優雅さ」ではなく、生き方がにじみ出る「気骨」のようなものであるということです。才気ばしった少女時代を経て、「知的好奇心への刺激が足りなくて」破局を迎えた最初の結婚。インテリジェンスに満ちた乱暴者マルコム・マクラーレンとの出逢いと別れ。ファッション業界での挫折と再生。波乱に満ちた恋愛と人生こそが、奇抜でありながら品格のただようヴィヴィアン・ウエストウッドをつくり上げているのです。

創作物と自分とを切り離さなければ、ただただすり減るばかり。表現者とは、華麗であると同時に孤独な存在です。しかし、芸術に身を投じるそんな孤独さに、どうしようもなく惹かれてしまうことも事実です。バスキアとヴィヴィアン、生み出した表現と切り結ぶ二人の覚悟を、ぜひ劇場で目撃してください。

バスキア、10代最後のとき
Boom for Real: The Late Teenage Years of Jean-Michel Basquiat

サラ・ドライバー監督作品/2017年/アメリカ/79分/DCP/ビスタ

■監督 サラ・ドライバー
■撮影 アダム・ベン
■音楽 アンソニー・ロマン

■出演  ジャン=ミシェル・バスキア/ アレクシス・アドラー/ファブ・5・フレディ/リー・キュノネス/ ジム・ジャームッシュ/ パトリシア・フィールド

©2017 Hells Kitten Productions, LLC. All rights reserved.
LICENSED by The Match Factory 2018 ALL RIGHTS RESERVED
Licensed to TAMT Co., Ltd. for Japan
Photo by Bobby Grossman

【2019年5月18日~5月24日まで上映】

すべては、ニューヨークからはじまった―。

1987年、イーストヴィレッジで路上生活をしながら、友人の家のソファで寝ていた18歳の青年がいた。27歳という若さでこの世を去った、新時代を代表する天才アーティスト、ジャン=ミシェル・バスキアだ。破綻し、暴力に溢れた70年~80年代のNYには、バスキアの心を動かし、触発したムーブメントがあった。政治や人種問題、ヒップポップ、パンクロック、ジャズ、ファッション、文学、アート…それらのすべてが彼をアーティストとして育てていく。名声を得る前のバスキアの生活、NYとその時代、そしてどのように天才アーティストは生まれたのか?没後30年の今、その秘密に迫る―。

ストリートから、アートシーンのスターへ― NYが生んだ天才アーティスト誕生の秘密に迫るドキュメンタリー!

元恋人が30年間保管していた秘蔵作品や、影響を受けた音楽や詩を交えながら、ミュージシャンのファブ・5・フレディ、映画監督ジム・ジャームッシュ、『プラダを着た悪魔』のデザイナーパトリシア・フィールドらが当時を語る。監督は、同じ時代をNYで過ごした『豚が飛ぶとき』のサラ・ドライバー。冷蔵庫、壁、ドア、洋服、そして外のゴミまでがアートに変わる様子や、創作中のバスキアも登場。ジャンルを超え縦横無尽につながる活動、コラージュからドローイングへと次々に手法を変え、遂にキャンバスへと至る変化が楽しめる貴重な映像も満載。時代を体現し今なお新しい映像と音楽で、真実のストーリーを紡いでいく。

ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス
Westwood: Punk, Icon, Activist

ローナ・タッカー監督作品/2018年/イギリス/84分/DCP/ビスタ

■監督 ローナ・タッカー
■音楽 ダン・ジョーンズ
■編集 ポール・カーリン

■出演 ヴィヴィアン・ウエストウッド/アンドレアス・クロンターラー/ケイト・モス/ナオミ・キャンベル/カリーヌ・ロワトフェルド/アンドレ・レオン・タリー

©Dogwoof

【2019年5月18日~5月24日まで上映】

女王の流儀、教えましょう。

2016年2月、ロンドン・ファッション・ウィークの秋冬ショーを控えた前夜。ヴィヴィアン・ウエストウッドのアトリエでは、最終チェックに追われるデザイナーとスタッフたちがいた。デザイナーであるヴィヴィアンは、1枚1枚を細かくチェックし、指示を間違った服には「最低ね。クソ食らえよ」と容赦なく言い放つ。77歳を迎えた今も、現役だ。

カメラの前に座るヴィヴィアンは、「過去の話は退屈だわ」と惚れ惚れするようなカッコよさで言い放った上で、自らの生涯について語り始める。絶好調のヴィヴィアンが、自分の会社は「危険信号よ」と驚くべき言葉を口にする。果たしてその真意とは―。

〈デイム〉の称号を持つ英国初のファッション・デザイナー、その情熱に満ちた生きざまを描くドキュメンタリー!

秘蔵映像と共に語られるのは、音楽史を変えたパンクムーブメントを生み出すまでの秘話、デザイナーとしての躍進と挫折、無一文からの再出発。世界的人気ブランドとして成功するまでの知られざる道のりが、自由で痛快な名言を織り交ぜながら披露される。また、2度の離婚と25歳年下の公私にわたるパートナーとの関係も、家族の証言で明かされる。

【特別レイトショー】ザ・スリッツ:ヒア・トゥ・ビー・ハード
【Late Show】Here to Be Heard: The Story of the Slits

ウィリアム・E・バッジリー監督作品/2017年/イギリス/86分/DCP/ビスタ

■監督・脚本・撮影・編集 ウィリアム・E・バッジリー

■出演 ドン・レッツ/ヴィヴ・アルバータイン/ポール・クック/アリ・アップ/デニス・ボーヴェル/テッサ・ポリット/ケイト・コラス/バッジー

© Here To Be Heard Limited 2017

【2019年5月18日~5月24日まで上映】

これは超低予算中、情熱だけで作られた作品。この映画は正直で残忍で、生々しいエモーションに満ちている。―テッサ・ポリット(スリッツ)

本作は世界初の女性のみのパンクロック・グループ、スリッツのドキュメンタリー。彼女たちの歴史を70年代中ごろのバンド結成時から、解散以後のメンバー個々のストーリー、2005年の再結成、そして2010年、本作の制作中に癌でヴォーカルのアリ・アップが亡くなるまでを追う。

アーカイヴ映像や初めて公となる写真の数々、メンバーの証言やファン、プロデューサーや評論家などスリッツに影響を受けてきた面々のインタビューで構成された本作は、まさにアリ・アップの言葉が最も端的に作品を表わしている。「私は人に好かれようと思ってここにいるのではない。私は人に聴いてもらうためにここにいるの」。

監督は2011年のデビュー作であるワシントン州オリンピアのバンドKARPのドキュメンタリー映画『Kill All Redneck Pricks: A Documentary Film about a Band Called KARP』が10カ国で上映され好評を博したウィリアム・E・バッジリー。本作は長編第二作目となる。